日鉄、成長確保へプランBも焦点に-USスチール買収は阻止の可能性
(ブルームバーグ): 日本製鉄は約2兆円を投じての米鉄鋼大手USスチールの買収に期待を寄せていた。ただ米国内での政治的な反発は収まらず、買収計画が白紙になる可能性も高まっている。今後の成長を確実なものとするため次のステップの行方が焦点となりつつある。
日鉄は今回の買収を通じて粗鋼生産能力を大幅に引き上げ、生産拠点を需要が低迷する日本から海外にシフトして鉄鋼生産大国で過剰生産が問題となっている中国と対抗するはずだった。ただバイデン米大統領が同買収を正式に阻止する方針との報道が出るなど、不透明感は高まっている。
SBI証券の柴田竜之介アナリストは、米国以外で日鉄が今後の成長のエンジン役に期待できる市場の筆頭候補としてインドを挙げる。人口や需要が増加し、国内での地産地消が見込めるため「お金を使うのであればインドだと思う」と述べた。
インド政府は2030年までに粗鋼生産能力を現在の約2倍となる年3億トンに引き上げる目標を掲げており、すでに日鉄において重要な市場だ。同社は鉄鋼大手の欧州アルセロール・ミタルとのインド合弁会社を持っており、今後数年にわたって生産能力増強を計画している。
柴田氏は東南アジアは人口増加などの点で魅力があるものの、中国から地理的に近く過剰生産の影響を一番大きく受けるため、難しいとの考えを示した。
訴訟を起こすという選択肢もある。関係者によると、バイデン大統領が買収を承認しない場合、日鉄とUSスチールは訴訟も辞さないという。
ただ、ブルームバーグ・インテリジェンスの訴訟アナリストのホリー・フラウム氏らは「大統領の決定は審査の対象とはならないため、裁判による異議申し立ては困難な道となるだろう」と指摘する。
日鉄は1980年代から米国で事業を進めており、USスチール買収が実現しなくても既存のビジネスを強化して米国事業を成長させる方法を検討していく可能性もある。
日本製鉄は、USスチール買収について日米間の不可欠な同盟関係が重要な基盤として存在する中、政治が真の国家安全保障上の利益に勝る状態が続くことは適切ではないとコメント。日本製鉄としては米国の正義や公正さ、法制度を信じているとし、公正な結論を得るために今後あらゆる手段を検討していく、と買収の成功に全力を注ぐ考えを示した。
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Shoko Oda