「アメリカ・ファースト」ウイルスがバイデン大統領に伝染?USスチール買収阻止で免罪符得たトランプ流ポピュリズム
「米国第一」に翻弄されるきっかけに
今回のUSスティール買収中止命令は、日米の鉄鋼産業のあり方を左右するだけでなく、今後の世界情勢が「アメリカ・ファースト」に翻弄されるきっかけを作ることにもなったと言えそうだ。それがどんな世界になるのか、昨年暮れに英国の有力経済紙が予測する特集記事を掲載していた。 「アメリカ・ファーストは、2025年の世界をいかに変貌させるか」(英紙「フィナンシャル・タイムズ」電子版2024年12月28日) 記事は、トランプ大統領の発言などを分析して5つの可能性を提示している。 (1)新たな大陸間取引 トランプ政権は、欧州やアジアの同盟国をcontempt(軽蔑)してロシア、中国との大規模取引を導入する。 (2)偶発的戦争 米国が他国の紛争に不干渉の立場をとる中、偶発的な戦争が各地で多発する。 (3)世界の無政府状態化 米国だけでなく西欧各国も「自国優先主義」を取り入れ、国際機関が無力化して世界は無政府状態に。 (4)米国抜きのグローバル化 米国が世界に背を向けた結果、他の国々は相互依存を加速させて地域的な通商協定が締結される。 (5)アメリカ・ファーストの成功 米国の技術と金融の優位性が増大し、国際的に圧倒的な力が証明される。中国は体制崩壊の危機に陥る。欧州と日本などの同盟国は防衛費の大幅増大を余儀なくされる。米国内では、トランプ体制に反対するリベラル派は沈黙する。 記事は、次の4年間の現実は、これらすべてのシナリオが奇妙に混じり合ったものになり、さらに予期しない展開がいくつも加わるだろうと予測するが、日本にとってこの「アメリカ・ファースト」の世界は、ろくなことを期待できそうもないようだ。 【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】 【表紙デザイン:さいとうひさし】
木村太郎
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