田中圭”宏樹”がとにかく健気で悲しい…思わず戦慄した”真琴”のドン引き行動とは?『わたしの宝物』第5話考察レビュー
宏樹(田中圭)が”托卵”に気付いた!
真琴の狂気は、ついに宏樹にまで及ぶ。 「ずっと宏樹さんのことが好きでした」 「美羽さんは宏樹さんを裏切ってますよ 不倫しています」 真琴は宏樹のことを度々“推し”と表現していたが、不倫を暴露する口ぶりに“宏樹を自分のものにしたい”という邪な感情やニュアンスは感じられない。むしろ、好きな人を地獄から解放してあげなければ、と。善意や使命感のようなものが窺える。 真琴の元夫は育児に非協力的で、しかも不倫をしていた。だから、不倫という行為そのものが許せないし、自分の元夫と違って優しく、今が一番幸せだと言ってくれる宏樹を軽んじた美羽に怒りを覚えたのだろう。 でも、その行き過ぎた正義感は、ひとつの家庭を狂わせ、壊していく。もちろん不倫は倫理的に疑わしい行為ではあるが、あくまで美羽家族の問題であって、正直部外者である真琴が口をはさむことではない。どうしても言いたいのなら、せめて美羽の方にだろう。 さらに真琴は、最後に大きな爆弾を落とす。 「栞ちゃん」としか口にしてはいないものの、それでも宏樹には十分すぎるくらい伝わってしまった。真琴の告白をきっかけにDNA鑑定を行った宏樹は、その結果に鑑定書をぐしゃりと握りしめる。宏樹の心中を思うと、胸が痛くてたまらない。
それぞれ罪深いけれど救いもあって欲しい…!
以前のモラハラまがいな宏樹に戻っても仕方がないくらいの絶望感なのに、美羽のことを問い詰めもせず、変わらず栞を可愛いがる。 栞のハーフバースデーには、本物の家族である美羽と栞、そしてそうでない自分の決して埋まらない溝のようなものをスマホの画面越しに感じて、思わず涙を流してしまったけれど。空気を壊さないように、家族を壊さないように。自分を抑え込んだ宏樹がとにかく健気で悲しい。 水木莉紗(さとうほなみ)が冬月へ想いを伝えたり、冬月が宏樹を美羽の旦那と知ってしまったり。美羽をとりまく周りにも動きがあった。冬月は初めて実の娘である栞と会い、その存在を知ることになったが、まさか自分の子どもであるとは毛ほども思っていないだろう。でも、栞の年齢から逆算して気づく場合もあり得る。 元をたどれば不倫と托卵の原因は宏樹のモラハラにあると言えなくもないが、宏樹も自分に非があることを承知しているし、それ相応の努力をしてきた。だからこそ、宏樹が起こした無茶な行動には、余計に思いを馳せてしまう。 栞は自分の子じゃないとわかっていても愛情を注ぐ宏樹は、もう本物の父親と言っていいのではないだろうか。どうにかバランスを保ってきた幸せが、ひとりの正義によって崩壊の一途をたどっていく。みんなそれぞれ罪深いけれど、そろそろどこかに救いがあってほしい。 【著者プロフィール:西本沙織】 1992年生まれ、広島在住のライター。会社員として働くかたわら、Web媒体でエンタメに関するコラムやレビュー記事の執筆を行っている。ドラマや映画、マンガなどのエンタメが好き。
西本沙織