【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】『LOTR』をまだ観たことも読んだこともない、という人でも大丈夫!『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
大人の男たちがしっかりと真面目に面白いことをやる、というのが、この作品のいいところ
もう1作品は『ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一発!』。ヘヴィメタル大国でも知られるフィンランドから来たヘヴィメタ映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』の続編です。 ライブの直後に逮捕され服役中のバンド、インペイルド・レクタムのメンバーたち。彼らは金儲け主義のプロデューサーから、ドイツで話題のメタルフェスへの出演をオファーされます。獄中にいることはもちろん、それゆえに練習ができないことや、プロデューサーが自分たちの話題優先で金儲けしか考えていないことから固辞します。 ところが、ギター担当のロットヴォネンのお父さんが急病で倒れてしまい、実家にあるスタジオが消滅の危機に。彼らは脱獄してスタジオをなんとかキープし、フェスへの参加を決めます。うまくいくと思っていた矢先、音楽業界の闇に飲み込まれ、メンバーの間には軋轢が……。 日本でフィンランド映画が観られる! フィンランドといえばアキ・カウリスマキ監督作のイメージが強いですが、それだけじゃない。こういうエンタメ作、なかなか日本に来ないから、嬉しいですね。 ヘヴィメタとフィンランドが結びつかない、という方もいらっしゃると思いますが、実はフィンランドではめちゃポピュラー。エアギターのコンテストがフィンランドの名物行事になっているほどですから。しかも、BABYMETALもあるシーンで出演しますが、彼女たちのパフォーマンスが世界のメタルファンの間でウケている理由も分かると思います。 そもそもの話がとんでもないんですよね。とはいえ、前作を観ていなくても大丈夫。この作品だけで十分楽しめますから。彼らが目指すフェスは憧れのイベントだし、出演できるのは最高なんだけど、確かにフェスにはいろいろあるんですよね……(笑)。商業的にもアート的にもバランスのいいフェスもあれば、どっちかに偏っているものも。そこで北欧らしい皮肉が効いています。 大人の男たちがしっかりと真面目に面白いことをやる、というのが、この作品のいいところ。音楽好きだからこそ、音楽に向かう熱意ひとつで動く大人たちを描くとハートフルな物語になるんですよ。小手先勝負のギャグではなく、大人の友情やアイデンティティへの対峙を描いているので、ハードロックがあまり得意ではないという人でもスッと物語に入れると思いますよ。 ちなみに、主人公トゥロがちょっぴりオトボケ、面白い表情を見せてくれるハードロッカーだけど、本人は超ハンサムガイでした。劇中でもよく見ると分かりますよ! 来年もたくさんの作品を紹介しますので、楽しみにしていてください。よきホリデーシーズンを! LOTR TM MEE lic NLC. (C) 2024 WBEI (C)Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018 取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己 『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』 上映中 『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』 上映中 ■LiLiCoプロフィール 1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。