<選抜速報>智弁学園、エース村上が669球を投げサヨナラ打の初V!
延長10回、高松商の先頭、安西がライト前ヒットで出塁すると、盗塁を成功させた。続く、荒内はカウントを追い込まれ、バントができず、強行に出てワンアウト。同点タイムリーを放った米麦はライトへのファウルフライに倒れたが、走者はタッチアップで三塁へ。しかし、4番の植田はセンターフライに終わる。 その裏、智弁学園も、先頭の中村がセンター前ヒットで出塁した。青木雄大(3年)は、スリーバント失敗で進められなかったが、納がバントでサヨナラ走者を二塁へ送る。二死二塁で、キャプテンの岡沢。だが、結果は、二ゴロ。疲れを見せない両投手の熱投が光る。 延長11回、智弁学園の先頭、太田の打球は、ライト線を襲う。だ、荒内がスライディングしながら好捕。ビッグプレーでピンチを防ぐ。しかし、二死から高橋がヒットで出塁。投手の村上の打球は、センターの頭上を襲う。 「心のなかで抜けてくれと思っていた」 打球ははるか上を抜け、劇的なサヨナラツーベースで初優勝を飾った。 一人で5試合を投げ、最後は自分のバットで決めた村上は、「5試合、すべていけと監督に言われていた、それができてよかった。きょうはよかった。(三塁の)大橋が(好守備で)さばいてくれて、その勢いでここまできた。あそこまでいったら、気持ちで負けたら負けると思っていた。669球? いつも球数が多いので、夏にはもっと少なくいきたい」と、淡々とした表情で語った。 昨秋の近畿大会は、準々決勝で大阪桐蔭に4-9と完敗。あわやコールド負け寸前のゲームでセンバツ出場も危ぶまれていた。ドラフトでリストアップされるようなスター選手は一人もいない。前のチームには、ヤクルトに2位指名された広岡大志がいて、2年前には巨人に1位指名された岡本和真と、スター選手に引っ張られてきたチームだったが、初の決勝進出を果たしたこのチームの武器は、団結力と粘りである。 指揮をとって11年目になる小坂監督は、センバツ出場が決まってから「日本一になると、本気で言いなさい」と、選手をその気にさせてきた。準決勝の龍谷大平安戦は、逆転サヨナラ。決勝までの失策は、わずか「3」。全員で守り勝つ野球が、ついに頂点を極めた。 試合後、小坂監督は、「あまりにもしんどい試合だったので、涙が出ると思ったのですが、笑うしかできなかった。何度か高松商のファインプレーにはばまれ、最後の打球もとられるかと思ったが、抜けてくれて勝ちを確信した。日本一を掲げてやってきたが、それを実現できたのでよかったと思います。村上は粘りつよく、一戦、一戦、5試合を投げてくれた。村上を褒めたいと思う。今まで支えられてきた、いろんな人に感謝の気持ちを伝えたいと思う」 38歳の指揮官は、そう笑顔でコメントを残した。