船舶対象の原子力サミットが英国で開催。脱炭素・安全保障など議論
原子力エンジニアリングサービスを手掛ける英コア・パワー(本社・ロンドン)はこのほど、「海事産業向け新原子力サミット」を開催した。同サミットには過去最高の350人超の海事関係者が参加した。エネルギー安全保障、脱炭素化、規制、基準、市場、技術、経済について議論。現在、原子力エネルギーを船舶などに導入する際に課題となっているテーマで活発な議論が展開された。パネリストとして原子力、海事部門、金融専門家、規制当局から40人超が参加した。 同サミットは6月中旬にロンドンで実施された。 コア・パワーの会長兼CEO(最高経営責任者)のミカル・ボー氏は、「多くの参加者が今回のサミットで海事用原子力の議論に参加したことは、海事業界で原子力エネルギーが気候変動に対していかに重要となっているかを示すものだ」と述べた。 当日のサミットではドライバルク、タンカー、クルーズ、コンテナ、港湾、造船所など、海事産業の主要セグメントのメンバーによるプレゼンテーションが実施された。 具体的には原子力技術や安全性、セキュリティーの専門家が、新たな原子力技術を浮体構造物や船舶にどのように組み込めば、エネルギー回復力とゼロエミッションの両方を実現できるかについて活発な議論を展開した。 2022年の第1回コア・パワー・サミット以来5回目となる今回のイベントへの参加者は第1回開催時に比べ5倍増となった。全ての参加者が海事セクターにおける新しい原子力の導入に備えるための重要なポイントについて検討した。 「海事産業参加者は、将来の新原子力エネルギーシステムに備え、スキル、知識、ツールの構築にどのように投資するかを検討しなければならない。原子力なくしてネット・ゼロはあり得ず、まさにエネルギー転換の最終局面である」とボー氏は説明した。 今回、同サミットでは、新しい原子力の海事産業への導入を成功させるポイントについて、海洋環境での使用に適した技術ソリューションの導入であると結論付けられた。 このような課題を克服するためには、原子力エネルギーの導入の際の機器周辺の緊急時計画区域が非常に狭い点、システムの安全性や港湾での使用済み核燃料の取り扱いを回避するための長期の燃料サイクルなど、三つの重要な基準を満たす点が指摘された。 ボー氏は今回のサミットについて「条件が整ったことで、われわれはIMO(国際海事機関)とIAEA(国際原子力機関)の両組織に、浮体式原子力発電と原子力船の安全基準改訂について伝えた。われわれは30年代に商業化される海上の新しい原子力のために、国際社会が基準を最新のものにすべく、今後数年間で原子力エネルギーの船舶への導入が大幅な進展を遂げることを期待している」と総括した。
日本海事新聞社