ナイフや拳銃で2人殺害される…奥田交番襲撃事件から6年 異例のやり直し裁判で遺族が待つ「謝罪の言葉」
富山テレビ放送
全国を震撼させた奥田交番襲撃事件から、26日で6年です。 交番の警察官が殺害され、奪われた拳銃で警備員が殺害されるという凶悪な事件でしたが、事件の背景など明らかになっていないことが多いままです。 殺害された警備員の男性の遺族が、いまの心境を語りました。 事件が起きたのは2018年6月26日。 富山市の奥田交番に元自衛官の島津慧大被告(当時21)が押し入り、交番にいた稲泉健一警部補を、持っていたナイフで刺殺。 拳銃を奪ったのち、近くにある奥田小学校の改修工事で警備員をしていた中村信一さんを射殺したとされています。 事件から6年。 殺害された中村さんの遺族は…。 *亡くなった中村信一さんの妻 「年数に関係なく、事件当時が脳裏によみがえることがある。辛くて、しんどい、6月。何年たっても変わらない」 事件発生時刻の26日午後2時には、中村さんの同僚など2人が事件現場を訪れて花を手向けました。 交番で警察官が奇襲されたこの事件を教訓に、県警は交番襲撃を想定した訓練を今年初めて行いました。 道を尋ねて交番を訪れた凶悪犯が突然刃物で警察官に襲いかかるという想定で、応対した警察官が制圧するまでの対応を訓練しました。 事件発生以来県警は、単独でのパトロールを原則廃止とするなど、警備態勢の見直したほか、県内の交番や駐在所には仕切り板付きのカウンターを設置するなど防犯体制を強化しています。 *県警機動警ら隊 竹内靖隊長 「全国的に(銃を使った)凶悪事件が多発している。あらゆる装備機材を活用して、対処能力の高度化をはかりたい。県警の全員がこの日を絶対に忘れることなく、県民の安心安全のためにまい進したい」 【以下、取材担当記者の報告】 この事件は「交番で警察官が襲われ、奪われた拳銃で一般の人が殺害される」という前例のない凶悪事件でした。 裁判でも異例の展開をたどっていて、6年たった今も判決は確定していません。 この事件が、なぜ起きたのかも解明されないままです。 長期化する裁判の経緯を振り返ります。 強盗殺人などの罪に問われ、逮捕・起訴された島津慧大被告に対し、2021年一審の富山地方裁判所は「拳銃を奪う意思が、殺害後に生じた可能性を排斥できない」として「強盗殺人」ではなく「殺人と窃盗罪」の適用に留まると判断して無期懲役の判決を言い渡しました。 これに対し二審の名古屋高等裁判所金沢支部は、一昨年、「一審判決は事実誤認であり、強盗殺人罪の適用を前提に量刑を判断すべきだ」として、一審の判決を破棄し裁判を再び富山地裁に差し戻すとしました。 これを不服として島津被告の弁護側は最高裁判所へ上告していましたが、ことし3月、最高裁判所はこれを棄却し、裁判は再び、富山地方裁判所で、やり直されることが決定しました。 裁判の審理が1審に差し戻されるという極めてまれな展開となったこの事件。 最大の争点は、警察官の拳銃を最初から奪う目的だったのか、それとも殺害後に拳銃を奪う意思が生じたのかでした。 1審の富山地裁は殺害後に生じた可能性もありうるとして強盗殺人を適用しませんでしたが、2審の名高裁金沢支部が、事実を誤認しているとして裁判のやり直しを命じています。 やり直し裁判は新たに選任される裁判員がもう一度証拠を調べ、再び争点を整理して審理が進められます。 再開される時期はまだ明らかになっていません。 差戻し審のポイントについて、刑法に詳しい専門家に聞きました。 *高岡法科大学 西尾憲子教授 「(検察が)強盗殺人というかたちで、どう立証していくのか。高裁判決で「争点に」と審理された部分が、どう証明されるのか。量刑が注目されると思うが、こんな重大な事件が起き、犯罪をした人自身がどう責任を負うべきなのか。責任の範囲が重要。量刑だけでなく、どう審理が尽くされるのか注目したい」 高等裁判所の判断通り、強盗殺人罪の適用を前提に裁判が進む場合には、無期懲役か死刑か、その量刑をめぐって慎重に審理が進められることになりそうです。 一方、島津被告は1審の裁判では黙秘。 2審は出廷しておらず、法廷の場でまだ一言も話していません。 謝罪の意思はあるのか、なぜ交番を襲撃したのかなど本人の口からは何も語られていません。 やり直し裁判で遺族は、その言葉を待ち続けています。 *亡くなった中村信一さんの妻 「自分に課される量刑を決める裁判に向き合って、遺族と向き合って、やりなおし裁判に臨んでほしい。できれば、自分の声で、何かを言葉で語ってくれればと望んでいる。一番欲しいのは、謝罪の言葉、後悔の言葉。その発言で傷ついてもなんでもいい。とにかく自分の言葉で話してほしい」 中村さんは、「想像もできないような凶悪事件が、地方でも起こりうることを忘れないでほしい」と話していました。 事件から何を教訓とし未来へつなぐべきか。 裁判の行方に注目し、今後も取材を続けます。
富山テレビ放送