米大統領選激戦州で「不法移民が複数回投票」の偽動画 露の工作か
米大統領選(5日投開票)の激戦州の一つである南部ジョージア州のラフェンスパーガー州務長官は10月31日、不法入国したハイチ人が州内の複数の郡で「投票する」と述べたとされる動画について「明白なフェイクで、おそらくロシアの情報工作機関が制作したものだ」と警告した。この動画はX(ツイッター)などで拡散し、共和党のトランプ前大統領の支持者らが問題視していた。 米国家情報長官室は1日、この動画に加えて、民主党のハリス副大統領の陣営関係者が芸能人から賄賂を受け取ったとされる虚偽の動画も作成されたと発表した。「ロシアは米国の選挙への信頼を弱め、米国民を分断するため、さらに情報工作をすると予想される」と警鐘を鳴らした。 ジョージア州関連の問題の動画では、黒人男性が「我々はハイチから来て、入国後6カ月で既に市民権(国籍)がある。ハリス氏に投票する。昨日も投票し、今日も別の郡で投票する」と発言。同じ顔写真を使った複数の身分証を持っている様子が映っている。 ラフェンスパーガー氏は声明で「これまでの選挙でも見られてきた偽情報の一例だ。大統領選前に不和と混乱の種をまくための外国による干渉の可能性がある」と指摘した。その上で、Xのオーナーである実業家のイーロン・マスク氏らに動画の削除を求めた。 トランプ陣営は以前から「民主党が不法移民に投票させている」と一方的に主張してきた。民主党は「市民権のない住民による投票は違法であり、あったとしても極めてまれだ」と疑惑を否定している。今回の情報工作は、こうした党派間の論争をあおり、米国を不安定化させる狙いがあるとみられる。【ワシントン秋山信一】