底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に
他方で総会後に開示された臨時報告書によると、三木谷氏の取締役再任への賛成率は82.16%と、昨年(89.50%)より7ポイント余り低下した。楽天は昨年5月に公募増資と第三者割当増資で3000億円規模の資金調達を実施している。翌月に開示された変更報告書では、直前まで34.21%だった三木谷氏による楽天の実質的な株式保有率が28.01%まで低下しており、今回の結果にも影響したとみられる。 ■株主が吐露した会社説明に対する不安
会社側の説明に対し、株主たちはどんな印象を持ったのか。総会終了後、50代の株主は、「モバイルは質問もなく、厳しい声はなくなりつつある。業績が改善したことで安心感が出てきている」と語った。 ただ、先行きへの不安が払拭されたわけではないという。「キャッシュフローについて質疑や説明があったが、中長期的に本当に大丈夫なのか、確信を持てない内容だった。社債償還も2025年については、説明がフワっとしていて、見えてこなかった」(同株主)。
同じく財務戦略に最も関心があったという60代の株主は、「2025年の社債償還も全然問題ないとまで言い切って、全体的に自信がみなぎっていて非常にびっくりした」と振り返る一方、「そうした姿勢とは裏腹に配当は苦しそうだし、総会の会場を本社に移したのも、経費削減ということだと思う。そういうところに、何となく財務の不安定さを感じる」とも漏らした。 山梨県から訪れたという70代の株主は「配当がゼロなら来年までに株価を1000円くらいまで上げてほしい。三木谷氏のビジョンはわかったので成果を見せてほしい」とまくしたてた。
株主らの前で、三木谷氏が言及した財務戦略の「中期的なプラン」。その一端は、総会の直後に明らかになった。 楽天は4月1日、金融事業の大規模な再編に向けた協議を始めたと公表した。今年10月を目標に、銀行、証券、クレジットカードなどの金融子会社を1つのグループへと集約することを想定しており、経営の効率化や連携の強化を進める。 業績堅調な金融事業を一体運営することで収益力をより一層高め、財務基盤の改善につなげる狙いもあるとみられる。
■挑戦する姿勢に応援の声も 「国内で頑張る会社だから応援しているし、無配でももう少し我慢する。アマゾンなど海外企業にやられると税金が日本に落ちなくなる」。総会に参加した株主からは、国内のIT企業として新事業に挑戦する姿勢に対し、純粋に期待する声も聞かれた。 「将来的な大きな成長について、大変大きな自信とそれを実現する覚悟がある」と胸を張ったという三木谷氏に対し、期待と不満が入り混じる様子を見せた株主たち。長かった暗闇の先に一筋の光が見え始めた楽天は、本当にトンネルから抜け出すことができるのか。その確信度合いをめぐる両者の隔たりに、煮え切らなさも感じさせられる総会だった。
茶山 瞭 :東洋経済 記者