底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に
そのうえで、「損益分岐点を超えるのが今年の目標だ。それを達成した暁には、最終的にナンバーワンモバイルキャリアへの道、そこから派生するソフトウェア技術による世界への進出を行っていきたい」と、強気の姿勢を崩さなかった。 楽天モバイルは2月以降、家族や学生向けの新料金プログラムを相次いで投入している。三木谷氏は「3月の申し込みが大変順調だ」と述べ、足元の契約数を「650万」と明らかにしたという。過去最多を更新した昨年末(596万、MVNO・BCPを除く)から、約50万件増えた計算となる。今後も楽天経済圏の利用者や取引先の法人を中心に契約拡大を目指す考えを示した。
■財務戦略については“強気”の説明 その後の質疑応答では約30分かけ、株主からの質問に答えた。過去数年、恒例にもなっていたモバイル関連の問いはなく、株主の注目は今後の財務戦略に移ったようだった。 楽天は2024年の社債償還のメドがたったとする一方で、2025年にも約4800億円の償還を控えている。総会に約20年出席しているという株主からは、「金利負担が確実に増えていく中で、社債償還や借入金返済に向けたロードマップの詳細を説明してほしい」という質問があった。
この質問には財務担当役員ではなく、三木谷氏自ら、「金利はコントロールできないが、市場の楽天モバイルに関する信頼レベルが上がり、株価も回復基調だ。これに応じて、債券市場も信頼を戻している」と説明した。 三木谷氏は、楽天モバイルへの大型投資が一服したことに加え、キャッシュフローの改善や運転資金の効率化を理由に、「現在の社債や銀行借り入れの返済はまったく問題なく行える」と断言。「返済計画や将来的な無借金経営への布石は、しっかりした中期的プランを作ってある」とまで言い切ったという。
一方、楽天が今回無配を決めたことに不満の声も上がった。今期以降の配当の見通しを問われた三木谷氏は、「財務強化を行い、株価を上げていくことが、株主の皆様にとって1番だ」と述べるにとどめ、具体的なコメントは避けた。 10人の株主からの質疑応答を終えた後、総会は大きな波乱もなく、1時間24分で幕を閉じた。 総会では、提案された3つの議案がすべて承認された。今後の資金調達に向け、議決権や普通株式への転換権のない「社債型種類株式」を新たに発行するために定款を変更し、取締役と監査役の選任も決まった。