「夜遅くに歩いているほうが悪い」「いつまで落ち込んでいるの?」…被害者をさらに追いつめる「二次被害」に遭ったときはどうすればよい?【弁護士が解説】
犯罪の一次被害に起因して、周囲の人の言動などで被害者が傷つけられることを「二次被害」と呼びます。二次被害に遭ったとき、どんなふうに対処すればよいのでしょうか? 上谷さくら弁護士の著書『新おとめ六法』(KADOKAWA)より一部抜粋して、具体的な二次被害の例と対処法について解説します。
事例:性被害にあって刑事裁判中。SNSを通じて誹謗中傷が届きます。
CASE:性被害にあって、刑事裁判が行われているのですが、「美人局(つつもたせ)だろう?」「被害者ヅラやめろ」などという誹謗中傷が、SNSにたくさん届きます。匿名ですが、身近な人しか知らない情報も書かれているので、知り合いなのではないかと疑心暗鬼になっています。 ANSWER:そのような状況は明らかな二次被害です。刑法の名誉毀損罪や侮辱罪にあたる可能性があります。このような誹謗中傷は許さない、という趣旨で、侮辱罪が改正されて刑が重くなりました。警察に相談して、相手を特定して立件してもらうことも検討しましょう。
あなたを守る法律
「犯罪被害者等基本法」第3条 基本理念 1 すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。 2 犯罪被害者等のための施策は、被害の状況および原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。 3 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるものとする。
解説:回復を妨げる二次被害
犯罪被害には、生命・身体・財産などを侵害されるさまざまな被害(一次被害)があります。そして、その一次被害に起因して、周囲の人の言動などで被害者が傷つけられるのが「二次被害」です。 一次被害よりも二次被害のほうがつらかったという被害者はとても多いです。二次被害は、被害回復を遅らせる要因になります。 警察庁の調査によると、二次被害の相手は、(1)加害者関係者(加害者本人・家族、加害者の弁護人など)、(2)捜査や裁判等を担当する機関の職員(警察、検察官、裁判官など)、(3)同じ職場・学校に通っている人、(4)家族・親族……の順に多くなっています。 しかも、加害者よりも、身近な人からの二次被害にあった人ほど、被害回復が妨げられていることが明らかになっています。 二次被害により回復が遅れ、それまでの人間関係が壊れてしまう人もたくさんいます。「自分は被害にあっても毅然としていられると思っていたのに、全然違っていた」という方は少なくありません。 自分の意思とは関係なく、朝起きられない、食事が取れない、眠れない、外に出られない、勝手に涙が流れてくる、といったことは、被害にあうと誰にでも起こりうることです。 犯罪被害にあうことがその人にどれだけ重大な悪影響を及ぼすのか、しっかりと理解して被害者に接することが重要です。