「金利ある世界」で募る奨学金返済への不安、負担増に身構える大学生
(ブルームバーグ): 沖縄県に住む大学4年生の安部弘祐さんは、日本学生支援機構(JASSO)から給付型と貸与型の奨学金を総額で約680万円借りている。金利上昇が返済に影響することを取材を受けるまで意識しておらず、「金利について知った以上はなるべく早く返したい」と話す。
来春卒業予定の安部さんは、奨学金の返済計画を最低でも月3万円とし、余裕があれば6万円にする考えだが、「新卒の手取りは16万から17万が平均と考えると相当厳しい」と語る。返済の負担を見込み、給与の増加が期待できる企業を中心に就職活動を続けているという。
安部さんのようにJASSOから有利子奨学金を受けている学生は、2022年度に66万5000人。同機関の調査では、大学生の2人に1人は何らかの奨学金を利用している。JASSOの固定金利は過去2年で2倍に上昇し、学生たちは金利方式や繰り上げ返済など返済計画の再検討に動き始めている。若年層の金銭的負担が増えれば、消費を冷やす要因になり、長期的には将来への不安から少子化を助長する恐れもある。
給与や物価、住宅ローンに迫り来る変化の波-マイナス金利解除が契機
JASSOの第2種奨学金の固定金利は、日本銀行によるイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)修正以前の22年11月の0.605%から0.94%に上昇し、変動金利は0.077%から0.4%まで引き上げられた。利息には3%の上限が設けられているものの、今後市場金利の上昇に伴い基準となる財政融資資金の利率が上がれば、利息負担はさらに重くなる。
高等教育学などが専門の桜美林大学の小林雅之教授は、「金融知識がない人にとっては、1%の金利変動がどれほど影響をもたらすか全然見当がつかない」と指摘する。長く続いたマイナス金利の影響で奨学金の利息は意識されてこなかったとし、金利方式を適切に選択する知識を持たないことが延滞の増加などのリスクにつながるとの見方を示す。