投資で成功したければ基本は嘘を見抜くこと、そして「はずれ屋」が「買うな」という時こそ買うべき時だ
師匠の教え
ウォーレン・バフェットが20歳の時出会った、ベンジャミン・グレアムの著書「賢明なる投資家」は、彼に雷に打たれるような大きな衝撃を与えた。 【写真】投資の神様バフェットが教える「選択」の極意 「証券分析」の方は、デビッド・L・ドッドとの共著だが、これらの2冊の本をまるで「師匠から与えられたバイブル」のように大事にしているのがバフェットである。 バフェットが、「賢明なる投資家」から学んだこととして重要な二つのポイントをあげている。 1. ミスター・マーケット(に負けるな) 2. 安全余裕率(を確保せよ) である。 1の「ミスター・マーケット」は市場を擬人化したものであり、日本語で言えば「マーケット君」である。 この「マーケット君」は、株価が上昇し始めるとすぐに有頂天になり、やみくもに株式を買い集める。逆に株価が下がり始めると、まるでこの世の終わりが来るかのようにふさぎ込み、せっかく高値で買い集めた株式を安値で売り払ってしまう。まるで躁うつ病であるかのような存在だ。 バフェットの有名な「人々が熱狂している時には冷静に、恐怖におののいている時には大胆にふるまえ」という金言は、バフェット流の「マーケット君」への対処方法であるとも言える。
安全余裕率
2の「安全余裕率」は、2018年11月14日公開「投資の神様バフェットが最も重視した『企業を見抜く4つの視点』」4ページ目「仕入れ力は無駄を排除する力」、5ページ目「バフェット流に付け足すとしたら」で述べた要素などによって、まず「本質的価値」を算定する。 この本質的価値は、例えば企業買収(M&A)を行うときに会計士などの専門家が算定するように、財務内容や企業のブランド力などの「企業の(本当の)資産価値」から導き出される。市場の株価とは何ら関係が無いものである。 そして、この「本質的価値」を市場の株価が下回った時に投資のチャンスが訪れるのだ。しかし、バフェットは市場の株価が「本質的価値」を下回っただけでは購入に踏み切らない。 師匠のグレアムから教わった2の「安全余裕率」をさらに差し引いた価格まで株価が下落したときに、初めて投資に踏み切るのである。 例えば、トヨタ自動車の「本質的価値」が(1株当たり)3500円であったとしよう(あくまで仮定であるからご注意いただきたい)。市場価格が3500円以下になっただけでは、投資に踏み切らない。安全余裕率が30%の場合、3500円の30%(=1050円)を差し引いた2450円まで株価が下がってから行動を起こすのだ。 そして、さらに株価が下がれば、喜んで買い増しを行う。 もし、安全余裕率を見込んだ2450円まで株価が下がらなくても、バフェットは決して妥協しない。彼に言わせれば「投資は見逃し三振が無い野球」であるから、ボール気味の球にわざわざ手を出さなくても、次のチャンスを気長に待てばよいだけのことである。 「次のチャンスがやってこなかったことは、これまでなかった」というのもバフェットの言葉である。