家で暴れた息子への対応は?中学受験、ピリピリした「本番直前」に親ができること
残された2週間をどう使うか
「私からいっておきましょう」 そういうと騒動の翌日、小川先生は孝多に一冊の問題集を渡した。毎日6時に起きて、算数の問題を解くという孝多だけの課題だ。起きなければ、先生が家に電話するという。その緊張感があったからか、いつもは30分以上布団から出てこないのに、6時過ぎに起きてきた。 「むずかしいか?」 「そうでもないよ。一回解いた問題ばっかりだから。このレベルがすらすら解ければ、上位校にも入れるって」 小川先生は暴力騒動には触れず、今は受験だけに集中するよう伝えたという。先生のおかげで、勉強しようという姿勢を見せているところが救いだった。ぼくは残された2週間という時間を、どう使ってゴールまで走るか方針を考えてみた。 一つ目は、過去に解けなかった問題の復習を重視することだ。一度間違えた問題を理解するだけで、大きく得点が上昇する余地がある。とりわけ重要なのは、過去の入試問題の傾向を踏まえて作成された塾のテキストだ。今から新しい問題集に手をつける余裕はない。 二つ目は、暗記問題をおろそかにしないことだ。漢字や語彙、社会の年号や理科の知識問題は、知っていれば得点になる。難問は割り切ってやらなくても、記憶力だけである程度点数は取れる。残り時間が限られたなかでの戦い方だった。 小学生に広くいえることかもしれないが、孝多は記憶力が半端なく強い。一度見ただけで、多くのものを憶えてしまう。トランプで神経衰弱をやれば、クラスの友だちにも負けないという。自慢の記憶力をフルに活用することにした。 ◇中学受験の「受験日」は決まっている。そして結果の合不合にかかわらず、受験を終えたあとに「中学受験をしてよかった」と思えるような経験にするために、親たちは伴走する。そこで大切なことのひとつは、森さんのように頭ごなしにいわないことや、こどものことをよく見ることなのだろう。塾の先生に相談し、先生から勉強の重要性を言ってもらうことも、よく見ているからこそだ。とはいえ、イライラをぶつけられたら親でも傷ついてしまう。暴力事件から立ち直ることはできるのだろうか。 詳しくは後編「「ママ大好き」勉強嫌いの中学受験、家中荒らした息子がご機嫌になった切ない理由」でお伝えする。
森 将人(元証券ディーラー)