家で暴れた息子への対応は?中学受験、ピリピリした「本番直前」に親ができること
家中をメチャクチャにしたその後…
入試本番の2週間前。孝多が興奮して、家中をメチャクチャに荒らした日のことだ。ぼくが帰って部屋の片づけを手伝うと、妻も徐々に落ち着いてきた。孝多が塾から帰ってくるまでの間に、今後の方針を話し合った。 もう一切受験勉強に関わりたくない。それが妻の率直な思いだった。反抗期にさしかかりつつある男の子は、もはや暴力をふるう一人の男と変わらない。 「ご飯と洗濯くらいは今まで通りにするから……」 妻はうなだれたまま、自分の部屋に閉じこもってしまった。育ててきた子どもに暴力を振るわれるのが、どれくらい屈辱的なことか。自分がその場に立たされなければ、気持ちを理解するのはむずかしいだろう。 孝多は9時前に帰ってくると、黙って妻が用意したご飯を食べた。食欲が旺盛なところを見ると、この日は買い食いをしていないようだ。タブレットを見たいといい出さないのは、自分の行動を反省しているからだろうか。 「今日はずいぶん暴れたらしいな。ママが悲しそうだったぞ」 孝多はうなずくだけだ。 「孝多は今、何がしたい?」 しばらく考え込むと、孝多はぼそっと「遊びたい」と答えた。それが素直な気持ちだろう。
最後まで一緒に走るのはぼくしかいない
「受験勉強をやめれば遊べるけど、受験もあと2週間で終わるぞ」 「そうだけどさあ……」 「2週間たったら、もう勉強したくてもできないぞ。これが人生で、最後の受験になるかもしれないんだからさ」 孝多はしぶしぶうなずいた。あと2週間だけ頑張ってみるという。ひとまず走り切ることは決まったが、まだ妻と話をする気分ではないという。妻が手を引くといっている以上、一緒に走るのはぼくしかいない。一番腹をくくらなければならないのは、ぼくかもしれなかった。 暴力騒動のことは、その日のうちに塾の先生に相談した。算数クラス担当の小川先生は、エネルギッシュな指導スタイルで、勉強する姿勢にうるさい。授業を集中して聞かない生徒は来ないでいいといわれるし、計算式もきちんと書かないと許さない。 教室でノートを投げて怒ることもあるが、生徒の質問はどんなにむずかしい問題でも即座に解いてしまう。孝多にとっては、怖い存在であると同時に尊敬する先生だった。