なぜ南米選手権、クラブW杯、北中米W杯がアメリカ開催となったのか? 現地専門家が語る米国の底力
開催都市は、移民との親和性も考慮して決定
――2025年のクラブワールドカップは世界中から32の強豪クラブが集まります。アメリカで開催することで、どんな効果が見込まれますか? 中村:例えば日本で開催した場合、トルコ対ギリシャの対戦カードだったらお客さんはあまり入らないと思うんですよね。でも、アメリカには多くの移民がいて、ポーランド代表ならシカゴ、エクアドル代表ならニューヨークとか、メキシコ代表ならテキサスやロサンゼルスというように、開催都市と移民の親和性も考慮されます。だから、どの試合にもファンが入ると予想しています。 ――2026年のFIFAワールドカップはアメリカ、メキシコ、カナダの共同開催です。1994年のアメリカ大会決勝のブラジル対イタリアで記録された9万4194人の観客動員数はまだ破られていないんですよね。 中村:2026年の大会で破られる可能性はあると思います。1994年はまだアメリカではサッカーに対して斜に構えて見る人も多くいましたが、今はサッカーは王道になりましたし、テレビでいろんな国のサッカーを見られるようになったので、サポーターの見る目も肥えていると思います。
米のスポーツビジネスのスキルを生かしたい
――中村さんは会社の拠点をアメリカに置いているメリットをどんなところに感じていますか? 中村:ブンデスリーガやラ・リーガ、バイエルン・ミュンヘンやバルセロナなど、いろいろなリーグやチームの事務所がニューヨークにありますし、大手企業の本社も集まっているので、「そこにいる」ことが大事だと思っています。南米と時差が一緒で、ヨーロッパとは6時間の時差なので日中に電話ができますし、出張はヨーロッパが5~6時間、ブラジルは10時間で行けます。あとは、日本で(アメリカ時間の)夜に仕事を稼働させて、アメリカで朝稼働すると24時間で会社を回せるメリットがあります。 ――アメリカでスポーツビジネスの最前線を見てきたノウハウを、今後、どのように生かしていきたいですか? 中村:次の夢がまだ具体的になっていないことが、今の悩みなんです。今までは「留学したい」「MLSに入りたい」「自分が考えた大会を開催したい」「バルサで働きたい」「起業したい」など、目標を決めて邁進してきたんです。ただ、起業して以降は、いろいろなことに興味があって、絞りきれていない状況です。あと12年で60歳なので、時間がなくて少し焦っています。 ――イメージしても実現するのが難しいことのほうが多いと思いますが、中村さんは夢が実現するまでやり抜くのですね。 中村:まず「これをやりたい」というイメージを自分の中で鮮明にして常識化してから、少しずつ実現してきました。例えば「高校に行く」っていうのは、みんなクリアにイメージできるから、受験をしたり、遊ぶ時間を控えて塾に行きますよね。そうやって準備をクリアにすることが大切だと思っています。 ――スポーツマネジメントの世界でさらに大きな夢と位置付けられるのは、例えばどんなことですか? 中村:少し遠い夢ですが「海外のチームの強化部に入る」ことです。アメリカではアフリカ系アメリカ人男性や女性のGMも出てきましたけれど、アジア人ではまだほとんどいないんです。あとは、もちろん日本のスポーツチームの経営にいつか携わりたい気持ちもあります。ただ、計画を立てて考えるところまで入っていないので、今後はもっと具体的に考えられるようにしたいですね。 <了>