存在感が薄い「立憲・野田氏」が「国民・玉木氏」から主導権を奪う方法 企業・団体献金廃止と“もうひとつ”の意外な秘策 古賀茂明
■野田代表は「企業・団体献金の廃止」を取引材料に 野田代表が強調している政治資金改革については、11月21日に自民党が政策活動費の廃止方針を決定するなどいくつかの進展は確実な状況だが、これは、立憲の功績ではなく、世論を恐れて自民が譲歩しているに過ぎない。 本丸の企業・団体献金の廃止について、「来年度予算成立前に結論を出し、通常国会中の法案成立を目指す」こと、それが無理なら、「通常国会中に結論を出す」という内容で、自公と合意し、今後の攻勢を強める足掛かりにすることくらいはできそうなものだが、そのための取引材料を野田代表が出しているかというと、全くそんな動きは見えない。ただ、要求を出すだけで、相手が断ってきたら批判するという従来どおりの対応に見える。 幸い、事態は、11月12日配信の本コラム「自民党の命綱『企業・団体献金」の廃止に抵抗する国民民主・玉木代表を信じるな! 石破首相は今こそ『政界再編」を決断すべき』で指摘したとおりの展開になってきた。 石破首相は、今のところ、企業・団体献金の廃止に踏み込むことはしていないが、これを完全に否定する姿勢をとっているわけではない。自民党政治改革本部事務局長の小泉進次郎元環境相は、与野党協議のなかでこの問題を議論していく考えを示したが、これは当然石破首相の意向を反映したものだとみるべきだ。 立憲の野田代表は、今すぐに、石破首相に会談を申し入れ、上記の要求を提示すべきだ。そして、その見返りに補正予算への賛成をすると約束する。立憲としては譲歩しすぎだという声も出そうだが、補正予算をめぐる舞台で全く役割を果たせず、従来どおり、ただ反対して終わりということになるのに比べれば、はるかにマシだ。 しかも、この取引は、自民に対して大きな貸しを作ることになる。なぜなら、立憲の賛成があれば、国民民主の協力は不要となる。したがって、年末の税制改正大綱で具体的に決める年収の壁の引き上げ幅を小さくしたり、ガソリン税のトリガー条項については単に検討の先送りといった結論にしたりすることが可能になるからだ。 これにより、野党の中で国民民主だけが政策決定に関与できるという状況を変えて、立憲が何をするかで政治が動くという状況を作ることができる。年明け以降のゲームの枠組みを転換することにつながるだろう。 企業・団体献金について上記のような合意ができれば、国政の表舞台でこれを主要テーマにすることができる。実は、これは、自公との対立軸を作るだけでなく、国民民主に対して立憲が攻勢に転じる第一歩となる。立憲にとって、現在の最重要課題は、有権者を騙して自公を追い詰めているというような幻想を抱かせる「エセ野党」国民民主から、自公との対抗勢力の主役の座を取り返すことだ。