【紅白の定番】石川さゆり「天城越え」が愛されるスゴイ理由…ヒントは布袋寅泰の「ひと言」にあり
(1)最初の数秒だけで心を掴む強いインパクト (2)映像が浮かんでくる物語性がある (3)イントロだけで曲として確立している この3つです。「天城越え」のイントロに置き換えてみましょう。 (1)最初の数秒で響く三味線の音で、日本の伝統的な美しさを想像させて心を掴む (2)そこに泣きのギターが入ることで、伊豆半島の天城山や浄蓮の滝の風景と、情念の想いが混ざり合う映像が浮かんでくるサウンドを演出 (3)32秒のイントロだけで艶やかな気持ちになり、エアギターで真似したくなる 「天城越え」は、3つの条件が当てはまるベストイントロなのです。 特にオリジナリティを感じるのは、(2)そこに泣きのエレキギターが入ることで、伊豆半島の天城山や浄蓮の滝の風景と、情念の想いが混ざり合う映像が浮かんでくるサウンドを演出。 ここです。 「天城越え」は、重厚なエレキギターが唸りまくるのです。 イントロのスタートは三味線の音からはじまるので、最初は和の心、これぞ演歌!をイメージしますが、17秒から入ってくるエレキギターでロックサウンドに変身。愛憎入り混じった感情、葛藤や業を濃密に描き出し、聴く者の心を揺さぶるのです。 このサウンドアプローチは、80年代に台頭してきたニューミュージック系のバンドと肩を並べても引けを取らない存在感を出すための演出だったのではないでしょうか。 80年代のトレンドをしっかりとイントロに落とし込みながらも、時代に流されない耐久性を備えることを意識していたからこそ、令和の時代になっても、愛され続けているのです。 2018年の紅白歌合戦で石川さゆりは、布袋寅泰との共演で「天城越え」を披露していますが、この時、布袋氏はインタビューで「ギタリスト冥利に尽きるの一言です」と発言しています。 「天城越え」は、世界で活躍するロックミュージシャンも認める、演歌というジャンルを超越した“凄い”曲なのです。 ● 紅白歌合戦に連続出演しているからこそ可能な 粋なパフォーマンス 「天城越え」の“凄さ”を語る上で、もう一つ触れておかなければいけないことがあります。 それは石川さゆりが、紅白歌合戦で続けている粋な計らいについてです。 石川さゆりは、2007年の紅白歌合戦時に「津軽海峡・冬景色」を歌い、翌年2008年に「天城越え」を歌って以降、毎年、この2曲を交互に歌うことを続けています。 2021年、44回目の出場時、ラッパーのKREVA、ロックシンガーMIYAVIと「火事と喧嘩は江戸の華」というコラボ曲を披露した時も、この曲を特別出演という位置づけにし、続けて「津軽海峡・冬景色」も歌い上げる徹底っぷりなのです。 昨年の2023年、46回目の出場時に披露したのは「津軽海峡・冬景色」でした。 ということは、2024年の大晦日は「天城越え」を歌ってくれるでしょう(この記事を執筆している12月20日時点で紅白歌合戦の曲目は発表されていません)。 いや、ついに違う曲を披露するのかもしれない!発売から38年たった令和の時代でも、年末を盛り上げる風物詩として語られることも、「天城越え」の“凄さ”なのです。
藤田太郎