なぜ働いているとごきげんではいられなくなるのか【佐久間宣行×三宅香帆 特別対談】
超多忙な二人の、自分のご機嫌の取り方とは?
三宅 超ご多忙な中で、好きなものに触れる時間はありますか? 佐久間 毎日をごきげんに過ごすために、仕事の合間にぽっと数時間空きそうなら映画やお芝居へ、時には好物のカレーやとんかつを食べに……。海のブイのごとく日々の生活に“小さなごほうび”を浮かべたいと思っていますが……。 フリーになってからの約3年間、馬車馬のごとく働いてしまったんですよ。というのも、会社を辞めてから1、2年は「いただいた仕事は何でもチャレンジしてみよう」の精神で受けていたので。ありがたいことに成果がでると、それがシリーズ化したりして続いていくんですよね。 三宅 おこがましいですが、私もフリーランスなのですごくわかります。 佐久間 ヒット企画になれば続編もあるということをすっかり忘れていて、「あれ!? 『トークサバイバー!』って“3”まで作るんだ」みたいな状況に。いよいよスケジュールが破綻したので、あと半年~1年くらいかけて、エンタメを大量摂取していた頃のスケジュールに戻せたらとは思っています。 三宅 佐久間さんは“裏方でつくる仕事”と、“出役になる仕事”の両方があって、疲れませんか? 佐久間 “つくる仕事”に100%注力していた頃のほうが疲れていたかもしれませんね。 出る側の仕事も受けるようになって、2つの大きな収穫があったのでお伝えすると、一つ目は、本番中のキャストの気持ちが理解できたから、作り手に回ったときに収録前の機嫌の取り方とか収録後の適切な言葉のかけ方を知れたこと。 もう一つは、尊敬している作り手の仕事を合法的にのぞきに行けること。日本テレビでは「せっかち勉強~知らないとヤバイこと~」という番組に出演させていただいているのですが、出演オファーを受けた一番の理由は、業界を代表する演出家・高橋利之さんの現場を生で観られるから(笑)。 番組の作り方もターゲット層も、僕とは真逆の方なのですが、天才の現場を見られるのは幸せなんですよね。そのおかげもあって、最近また“つくる仕事”が面白くなってきました。 ただ、三宅さんのように、社会人として形成されつつある30歳前後でテレビの世界に出るのは案外大変かもしれませんね。Creepy NutsのDJ松永くんは、ある部分に焦点が当たりすぎた結果、誤解されることが多くなり、音楽に全振りした活動をしていますし。 三宅 ご著作を読んだときから気になっていたのですが、佐久間さんは悩んだ時、誰かに相談したりしますか? 佐久間 相談されはしますが、しないですね。自分の場合は不安とかリスク、失敗などでメンタルがやられないように、あらかじめネガティブ要素を想定して、できる限りの対策をしておく。著書ではそれを“ネガティブワクチンを打っておく”と表現しています。 三宅 『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』などでは、仮説と検証の繰り返し、とも書かれてました。例えば「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」なら、全然リスナーがいない、という仮説から始まったという……。 佐久間 そうです。「おじさんだし、一般人のラジオなんて聞きたくないだろう」から始めました。 そこから、「そういえば会社員だったパーソナリティはいないよな」「タレントさんは家族の話はしにくいだろうな」「レギュラーメンバーで年頃の娘がいるのは、自分だけだな」というように、自分の個性や武器は何なのかを考え、辿り着いた答えが「会社員で家庭を持っているおじさんにしかできない話をする」だったんです。