プロ野球で加速する投高打低の傾向 打者はどう対抗すべき?内田順三氏の視点「近藤ら3割打者の3人に共通するのは-」
今季のプロ野球界は投高打低の傾向がより顕著になった。3割打者は両リーグでわずか3人。投手のレベルが上がっていく中で、打者はどう対策していくべきか。多くの強打者の育成に携わった名伯楽・内田順三氏(デイリースポーツ・ウェブ評論家)の考えを聞いた。 ◇ ◇ ボールが飛ばないなんていうことも言われるが、ここ数年で急激に投手のレベル、特にスピードが上がった。トラックマン、ラプソードなど計測する機器がたくさん出てきたことで、いわゆる敗戦処理と言われる投手でも150キロを投げ込んでくる時代。打者目線で言えば、かつてはレベルが落ちた投手から打率を稼ぐこともできたが、それも難しくなった。 打者はパワーにはパワーで対抗しようと体を大きくし、軽量バットでスイングスピードを上げようと試行錯誤している。かつては速さに対して重いバットを使ってパンチショットで対応したり、短く持ってバットコントロールを駆使したりという対応があったが、今はバットを軽くして背中まで振り切るような打者が多く見られるようになった。 ただ、いくら排気量がある車に乗ってもハンドル操作の技術がないと車体はボコボコになる。それと同じで打撃もバットの重さどうこうより、結局は技術を上げないと対抗できないよね。 今年、3割を打ったのはソフトバンク・近藤、DeNA・オースティン、ヤクルト・サンタナの3人だが、彼らに共通するのは広角打法だということ。軸がぶれず、体の近くからバットが出てくるから差し込まれても逆方向にヒットが出る。引っ張ればオーバーフェンスにもなる。 オースティンの打撃を見ても、無駄な動きがないでしょう。前の壁が崩れず、トップの位置からバットが出てくる。サンタナにしても軸がぶれないから打つポイントが2、3個あり打撃に奥行きがある。近藤も同じで、両足を低く構え、丹田に力を入れ、軸で回転して打とうという意識を非常に感じる。 かつての落合もそうだったが、3割バッターにプルヒッターはいない。今も現場では選手に対して練習の時は45度に打つ意識で打ちなさいと伝えるんだけど、右打者で言えばインサイドなら左中間、アウトサイドなら右中間。試合の時にレフト線、ライト線まで広く90度を使えばいい。 巨人の阿部にしても小笠原にしても練習ではショートゴロ、ライナーを意識して打つことで、バットの軌道、バットの角度や入りを確認していた。落合や山本浩二さんも練習では逆方向からセンター、広角に打ち分ける打撃を心がけていた。今年のワールドシリーズでMVPを獲得したドジャースのフリーマン選手も練習では徹底して逆方向の打撃をしていると聞いた。そうした打撃を意識、徹底していく打者が成功していくよね。