冬場に起こる辛い腰痛…「自律神経の乱れ」と「冷え」が原因? 薬剤師が解説
腰痛に効く! 薬剤師が解説する薬の選び方(市販薬・漢方薬)
編集部: 腰痛に効く薬にはどのような種類がありますか? 村山さん: 腰痛治療には、痛みや炎症を抑える解熱鎮痛消炎剤が使用されます。具体的には湿布(しっぷ)や塗り薬などの外用薬と、痛み止めや漢方薬などの内服薬(飲み薬)があります。代表的な痛み止めの有効成分には、ロキソプロフェンナトリウム水和物やジクロフェナク、フェルビナク、インドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェンなどがあります。 編集部: 腰痛の薬はどのように使い分けたらいいですか? 村山さん: 腰痛を抑えたいときは、市販の痛み止めを上手に活用しましょう。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、痛みだけでなく炎症を抑える効果があり、炎症が主体となっている腰痛に効果的です。 編集部: 痛み止めを飲むと胃が痛くなることがあるのですが、どうすればよいですか? 村山さん: 非ステロイド性抗炎症薬は、副作用として胃が炎症を起こして痛くなることがあるため注意が必要です。市販の痛み止めの中には胃を守る成分が一緒に配合されているものもあります。胃が弱い方は胃薬と併用するか、胃に優しい痛み止めを選びましょう。 編集部: 胃に負担をかけない痛み止めはありますか? 村山さん: アセトアミノフェンは解熱剤としても使用される痛み止めですが、比較的作用が緩やかで炎症を抑える効果はほとんどありません。非ステロイド性抗炎症薬と比べて胃に負担をかけにくく、安全性が高いため、子どもや妊娠中の方にも使用できます。薬によって成分や効き目が異なるため、どれを選べばいいか迷ったら薬局の薬剤師や登録販売者に相談してください。 編集部: 湿布や塗り薬など、外用薬の使い分けも教えてください。 村山さん: 湿布には冷たく感じる冷湿布と、温かく感じる温湿布がありますが、鎮痛成分は同じものを使用している場合が多く、感じ方が違うだけです。痛みの箇所が炎症を起こして赤くなっているまたは熱を帯びている場合は冷湿布を、痛みの箇所が冷たくなって慢性的に痛みが続いている場合は温湿布を選ぶのが一般的ですが、薬の効果は同じことがほとんどなので、好みで選びましょう。湿布が貼りにくい部位やかぶれやすい方は、ゲルやローションなどの塗り薬がおすすめです。 編集部: 痛み止めの飲み薬と外用薬は一緒に使っても大丈夫ですか? 村山さん: 痛みが強い場合は、内服薬と外用薬を同時に使う場合もあります。ただし、市販の内服薬と外用薬を併用するときは、必ず決められた用法・用量を守って使用してください。迷ったときは、薬局の薬剤師や登録販売者に相談しましょう。市販薬を使っても強い痛みが改善しない場合は、整形外科やペインクリニックなどの医療機関を受診し、医師に相談してください。 編集部: 腰痛に効く漢方薬もありますか? 村山さん: 腰痛に対してよく用いられる漢方薬には「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」などがあります。 編集部: それぞれの使い分けを教えてください。 村山さん: 「八味地黄丸」や「牛車腎気丸」は、腎の働きが弱くなる高齢の方によく使われる漢方薬です。八味地黄丸は、体を温める作用や体全体の機能低下を改善し、慢性的な腰痛に効果があります。体力は中程度以下で、疲れやすく、カラダがだるい、下半身が冷えやすい方向きです。牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、8つの生薬からなる八味地黄丸に、むくみ、しびれをとる牛膝・車前子を加えたものです。とくに、尿量減少、腰痛、下肢のむくみが強い方に用いられるほか、痛みやしびれの改善に作用するため、足腰の痛みが強い方や排尿トラブルがある方におすすめです。 編集部: 当帰芍薬散はどんな効果がありますか? 村山さん: 「当帰芍薬散」は体を温める作用があり、冷えや女性特有の悩みによく使われる漢方薬です。体力虚弱で疲れやすく、冷え性で貧血の傾向がある方によく用いられます。生理不順、生理痛、更年期障害、産後の不調など女性特有の症状のほかに、めまい、むくみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え性やしもやけなどにも使われます。ただし、胃の弱い方には注意が必要です。 編集部: 芍薬甘草湯はどうでしょうか? 村山さん: ぎっくり腰などの急性の腰痛には、筋肉や筋の緊張を和らげる「芍薬甘草湯」を用いることもあります。漢方薬は自分の体質や症状が起きた原因によって選ぶことが重要です。ドラッグストアなどで気軽に購入できるものもありますが、何を選べばいいかわからないという方は、漢方薬に詳しい医師や薬剤師に相談しましょう。