「カミソリシュート」平松政次氏が明かしたONとの戦い裏話…長嶋氏が打つ直前にとった驚きの行動 幻と消えた巨人へのトレード話とは?
死球王だがONには当てなかった
平松氏の通算与死球は120。これはセ・リーグのみに在籍した投手の中で歴代最多である。“デッドボール王”平松氏だが、長嶋氏・王氏にだけはボールを当てたことがないという。 平松: ONは日本の宝ですからね。 徳光: ケガをさせちゃいけないと。 平松: そう、ケガをさせちゃいけない。抑えなきゃいけないけど絶対ぶつけてはいけないっていう気持ちはありました。 他のいろんな人には当ててますよ(笑)。でもON、王さん、長嶋さんだけは絶対に当てちゃいかん。そう肝に銘じてましたね。 徳光: 少年時代からの憧憬の念というか憧れの存在ですから。平松さんのひとつの美学ですね。
幻と消えた巨人へのトレード
徳光: 巨人へのトレード話があったという噂を小耳に挟んだことがあるんですが。 平松: ありましたよ。 昭和50年、長嶋さんが監督で巨人が最下位になったときに、女房が家にいたら電話がかかってきたんです。その頃はまだ携帯はなかったですから、廊下の端に電話が置いてあって、そこに長嶋さんから電話が来た。 女房のお袋さんが、「マーくん、マーくん、長嶋さんから電話よーっ!」って。もうあんなに走ってきたの初めて見たっていうくらい、飛び上がって来たんですよ。 徳光: 長嶋さんから直接、電話があったんですか。 平松: 直に電話。びっくりして「はい、平松です」って出たら「長嶋です、巨人来てくれ」。 私にとってはものすごくうれしい話なんだけども、ちょっとこっちの都合も言っておかないとと思って、「いや、別当(薫)監督がどう言うか…」。 そういう電話を受けているから、その明くる日から長嶋さんの行動が気になってね。それで年俸交渉も越年したんですよ。 1月6日に野球人のゴルフ大会があって、ゴルフ場へ行ったら長嶋さんがグリーンでパター練習をしていた。「この時しかチャンスはない」と思って、後ろから「長嶋さん、あの話はどうなりましたか」って聞いたら、パッと私の顔を見て、手を振りながら「ダメダメダメダメ」。それで終わり(笑)。 徳光: そうなんですか(笑)。でも、長嶋さんとしては、何らかの動きはしたんでしょうね、 平松: 動いたと思いますよ。 そのとき考えましたよ。長嶋さんの大ファンだし、自分の力も振り返ってみて、長嶋さんのチームに行ったら悪くても15勝はできるだろうと。そしたら、長嶋さんに多少は力を貸せるかなということまで考えましたから。
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