「世界の王」から新記録の三振を取るため「もう1周回そう」・江夏豊さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(25)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第25回は江夏豊さん。投手生活の前半は先発、後半は抑えで活躍し、通算206勝193セーブ、2987奪三振。とてつもない記録を残した名左腕はマウンド上で頭脳をフル回転させていました。(共同通信=中西利夫) ▽リリーフは打者を1球で打ち取るのが理想 基本的に僕は投げることが好き。マウンドに上がるのが好き。心臓が良くない時、肩や肘が良くない時、痛風の時でも「おい、行ってくれ」と言われたら、どんな状況、状態であってもマウンドに上がりました。18年間を振り返ってみて、降板させられたことは何度もあったけど、マウンドに上がるのを嫌がったことは一度もない。それだけは自分のピッチャーとしての唯一の誇り。それぐらい投げることが好きやった。先発の時は81球が自分の理想でした。打者27人を3球ずつで終わらせる。リリーフになれば、反対に1球で終わらせる。1球で終わるというのは裏をかくのではなしに、相手を読むということ。バットを振らせないといかんから、相手が読んでいるところの近くに投げていくというのが理想でした。
監督でいえば目配り気配り。ピッチャーだってマウンドに上がったらグラウンドのにおい、その時の状況、野手の動き、相手打者やチームの動き、全てを読むというのが最低限の仕事です。すごく難しそうに聞こえるけど、別に難しくとも何ともない。できる量は多少の差はあっても、みんな考えてやってます。風向き、相手のメンバー、残りの控えの選手とか全部計算してます。 バッターは三振だけはしたくないというのが本音ですよね。ホームランを打ちたい。でも三振だけはしたくない。そういう気持ちで打席に入ってくるわけです。そういうバッターから三振を取るというのは最高の快感ですよね。三振でも見逃しと空振りの二通りありますけど、力のあるうちは、やっぱり空振りに打ち取りたい。目つぶって投げても空振り。江川卓がそう。ここは真っすぐしかないという場面で、真っすぐを放って空振り。だから怪物と言われる。あれが最高のピッチャーの魅力ですよね。まあ、晩年のように球に力がなくなって裏をかくという時には見逃しという部分に魅力を感じました。 ▽「田淵、早く座ってくれ」