SGボートレースダービー、桐生順平選手の優勝戦内幕を解説 誰もミスしないレース展開、完璧な「まくり」決めた一瞬の角度
【植木通彦 ちょっといい話】 11月になり年末のSGグランプリ、PGⅠクイーンズクライマックスに向けボートレースは熱を帯びていきます。今回は10月に埼玉・ボートレース戸田で開かれたSGボートレースダービーを振り返ります。地元の桐生順平選手の素晴らしい優勝戦の内幕を解説したいからです。 優勝戦は次の豪華メンバーでした。 ①峰竜太(佐賀)②毒島誠(群馬)③桐生順平(埼玉)④関浩哉(群馬)⑤佐藤翼(埼玉)⑥馬場貴也(滋賀)。 結果は桐生選手が3コースから目の覚めるようなまくりを決めました。優勝戦に勝ち上がる3つの準優勝戦では、予選得点率上位の峰、毒島、桐生3選手が1コースからのレースでしたが内容には少し違いがありました。決まり手はいずれも逃げでしたが、桐生選手は完璧。峰、毒島選手はハンドルを入れてモンキーターンに体重移動する際にわずかにボートが浮いたりターンマークを外したりしていました。 とはいえ、スーパースターは高い操縦レベルでミスを瞬時にリカバリーしターン中期から後期を完璧なターンに変えました。でも私の目にはわずかな違いが見えたのです。それで準優勝戦から優勝戦までの間のモーター調整やメンタルの持ち方が違ったと思います。 いざ優勝戦では、4コース関選手が好スタートし3コース桐生選手は若干タイミングが遅れました。しかし、関選手の伸びは桐生選手を押さえ込むまではいきません。1コースの峰選手は関選手の動きを見ながらの逃げとなりました。峰選手は確実に安定したターンに入ろうとします。その時、スタートで遅れていた位置の桐生選手は視野に入っていなかったと思われます。桐生選手はスタートの後れを取り戻すためかもしれませんが、ターンの前に上体を起こす位置を通常よりかなり遅らせました。 これで結果的に峰選手がレバーを握り込むタイミング時に気がつけば真横で角度良くターンに入る桐生選手が見えたという感じになったのではないでしょうか。その角度の違いからあの見事なまくりが決まりました。誰もミスしないレース展開で一瞬のタイミングが勝敗を分けるというレースの進化を感じました。 このレース展開を演出したのは全国24レース場で最もコース幅が狭い戸田ならではともいえるでしょう。どのコースからも勝利のチャンスがあるのが戸田の魅力です。これもボートレースの妙味でしょう。
■植木通彦(うえき・みちひこ) 1968年4月26日福岡県生まれ。福岡県立博多青松高校卒。86年11月デビュー。2007年7月の引退までSG優勝10回を含む74回の優勝、公営競技初の年間獲得賞金2億円を達成したボートレース界のレジェンド。2018年、初代ボートレースアンバサダーに就任。テレビ『BOAT RACEプレミア』他、ネット放送、イベント、講演会で活躍中。『植木通彦オフィシャルブログ』(二次元コード)でも発信。