「今回は、決めろよ」恩師の激励を受けた遅咲きの日本代表スクラムハーフが故郷凱旋で初スタメン! 記念すべき一戦で小山大輝は何を感じたか?
大東大でもルーキーイヤーから不動のプレーメーカーとなり、2017年に社員選手として加入の埼玉パナソニックワイルドナイツ(21年から現名称)では田中史朗、内田啓介という2人の代表経験者と定位置を争った。 内田は言う。小山には「(ワイルドナイツに)来て欲しくなかった」。強力なライバルになるのがわかっていたからだ。小山は、トレーニング中どころかロッカールームでも2人に話しかけづらかったので面食らった。 「プロの世界は厳しいな。でも、鍛えてもらった」 田中は18年度限りで退団。小山が台頭したのは、内田がシーズン限りの引退を決めていた23年度だ。主戦級として、国内リーグワン1部でレギュラーシーズン全勝を果たした。 その途中に水面下で、代表招集を告げられた。 6月6日からの宮崎合宿を前に、恩師は「今回は、決めろよ」と激励。弟子はその求めに応えるよう初キャップ獲得を「決め」てから、故郷での大一番に挑んだ。 「田舎の芦別から代表になって、国を背負って戦っているところを見せて、皆に元気を与えられたらなと思っています」 対峙したイタリア代表は、戦前の世界ランクで日本代表より6つ上の8位。この日も接点の球によく絡んだ。日本代表は攻めを鈍らせた。 7―24とリードされて迎えたハーフタイム、小山は交替した。14―42で敗れた。 記念すべき一戦を思うに任せなかったわけだ。 それでも、立ち止まらない。 「(イタリア代表は)ちょっとしたプレッシャーが凄かった。見習っていかないと」とし、こう続ける。 「(今後は)プレッシャーに押し負けないようなコントロールができれば」 試行錯誤の先に、2027年のワールドカップオーストラリア大会出場があると信じているのだろう。 成田も「自分の教え子が日本代表でワールドカップに出るなんて、教師冥利に尽きるじゃないですか。味わってみたいな」と期待する。 取材・文●向風見也(ラグビーライター)