関西客3割減の衝撃 金大の調査 「早く大阪へ」声強まる
●乗り換えネック「ツアー組みにくい」 「関西からの客入りは伸びていないと感じていたが、まさかここまでとは」。金沢のホテル関係者は驚きを隠さなかった。北陸新幹線の敦賀延伸後に金大の研究者が調査したところ、関西から金沢駅に来た人数が延伸前と比べ、3割減ったとの結果が出たのだ。16日で延伸から半年。新幹線が延びたことで石川県にプラスがあった一方、マイナスも生じている可能性がある。(経済部・齋藤圭祐) 調査は金大の藤生(ふじう)慎准教授(交通計画)らが実施した。今年3~9月に関西2府5県から金沢駅を訪れた人数を調べた結果、延伸前の昨年同期と比べ31・2%減っていた。 ●駅の位置情報利用 調査はスマートフォンの位置情報を利用し、移動人数を推計する手法であり、関西客の実数を示すものではないが「3割減」は観光関係者に衝撃を与えて余りある。 減少の要因は何か。金沢ニューグランドホテルの担当者は「乗り換えや運賃が響いたのだろう」とみる。新幹線延伸のおかげで金沢-大阪間は22分短縮されたが、敦賀で乗り換えが必要となり、運賃は1950円高くなった。 「旅行代理店がツアーを組みにくくなっているとの話を聞く」。金沢の別のホテル関係者は不安を語る。敦賀でサンダーバードから北陸新幹線に乗り換える時間が最短8分と短く、その余裕の無さが、大勢で動く団体旅行にとってはネックになるのだ。 「関西の奥座敷」加賀温泉郷はどうか。藤生氏の調査では、関西2府5県から加賀温泉駅への来訪者は延伸前と比べ17・7%減となった。 一方、加賀市によると、今年4~7月、市内の旅館などを訪れた関西客は前年同期比で12・6%増えている。 ●夏は車、冬は鉄道 これはどんなカラクリか。山代温泉の関係者によると、加賀温泉郷では、夏は車で訪れる客が多く、冬は鉄道利用が増える。藤生氏の調査は「駅に来た人」を推計しているが、今の季節、車で加賀温泉郷に来る人が多いのだろう。 加賀温泉郷では加能ガニの漁期を迎える秋から冬に客が集中する。新幹線延伸の真価が問われるのはこれからかもしれない。北陸経済研究所の藤澤和弘氏は「延伸の真の効果は半年では分からない」と指摘する。だが現時点で一つだけ鮮明なことがある。 「一刻も早く、北陸新幹線の大阪延伸を実現してほしい」。石川県内の観光関係者は異口同音に強調する。大阪延伸を巡っては「小浜ルート」が工期・事業費とも大幅に増大し、県内からは「米原ルート」を含めて再考するよう求める声が強まっている。 藤澤氏は「敦賀延伸後、新幹線を新大阪まで、どのようにつなぐかを皆が考えるようになった」と語る。これも新幹線効果の一つだ。