『チ。』『宙わたる教室』に共通する叩き壊すべき“世界” “学ぶ”ことの先にある興奮と喜び
『チ。』と『宙わたる教室』に共通する最も大きなテーマ
一方、『宙わたる教室』の生徒たちもまた、さまざまな困難に直面する。「知」は、ときにその人が見ている「世界」の形を大きく変えてしまう。けれども、彼/彼女の周囲の人々が見ている「世界」は、依然として元の形のままなのだ。「お前だけが、なぜ?」。そこに生まれる、さまざまな感情や嫉妬心。さらには、みなと同じようにふるまうべきだという、善意の仮面をまとった「同調圧力」のようなもの。あるいは、主人公・藤竹の過去の「傷」となっている事件のように、その「成果」を「権威」に簒奪されることだってあるだろう。その人に不相応な「知」は、この「世界」の誰からも求められていないのだ。果たして、そうなのだろうか。もし、そうであるならば、叩き壊すべきは、その「世界」のほうなのではないか。それが、この2作品に共通するテーマであるように思うのだ。 ところで、冒頭に挙げたシーンは、現世に何も期待していない青年・オクジー(小西克幸)が、天文研究所の助手として働きながらも「女だから」という理由で満足に研究することを許されていないヨレンタ(仁見紗綾)に掛けた言葉であり、それに応えて彼女が、意気揚々と文字の素晴らしさを語ったシーンだった。 『チ。』の最初の主人公・ラファウ(坂本真綾)が火刑に処されてから10年後。偶然にも「地動説の資料」を預かることになったオクジーは、それを異端の修道士バデーニ(中村悠一)のもとに持ちより、その後ヨレンタとも知り合うことになる。かくしてヨレンタから文字を学ぶようになったオクジーは、研究の進捗を日記のように綴り始めるのだった。そして、ひとり納屋にこもって資料と格闘していたバデーニが宣言する。「地動説が完成した」と。そんな第10話「知」と対応するように「血」と名づけられた第11話。地動説の完成を祝う3人の前に登場する「現れるはずのない男」とは果たして誰なのか。そして、そこで明かされる衝撃の事実とは。年をまたいで2クール続くことが決定しているアニメ『チ。―地球の運動について―』。この「世界」を変えようとする人々の道程には、まだまだ数々の苦難と困難が待ち受けているのだった。
麦倉正樹