各所へのこだわり

エンジンは、低中回転域でスロットルペダルを踏み込んだ瞬間、弾けるようなパワーを生み出し、小気味いい加速感を味わえる。この痛快なレスポンスは、1気筒あたりの容積が比較的大きい3気筒エンジンだからこそ実現できたものだろう。 ただし、このエンジンは4000rpm前後にトルクのピークがあって、その先まで引っ張るとパワーの伸び感が薄くなるようで、マニュアルトランスミッションを操って高回転域をキープする走り方をしていると、ちょっともどかしく感じられてしまう。 ただし、8速ATモデルでDレンジに放り込めば、コンピューターが常に最適なギヤを自動的に選択するので、手間がかからないうえに活発に走らせることが可能になる。しかも、ATモデルは前車軸荷重がMTモデルに対して30kgほど重いせいか、前述した硬さの残る乗り心地がよりしなやかに感じられるので、個人的にはMTよりもATのほうに惹かれた。 きっと、GRヤリスの走りは欲しいけれど、いまさらあのスタイリングには乗れない……と、思い悩むジェントルマンドライバーたちにとって、新型LBX“MORIZO RR”は限りなく理想に近い存在かもしれない。 最後に、LBXの標準モデルであれほど気になった、いかにも3気筒的なエンジン音は、少し野太い音にチューニングすることにより、もはや3気筒感はほとんど伝わらなくなっていた。音色自体が美しいとは言いがたいけれど、ベースモデルからの進化幅は目覚ましいものがあった。 そのほかにもスポット溶接の打点を469カ所も追加したり、構造接着の塗布距離も12.8mも延長したりするなど徹底的にこだわった作りとされている。¥6,500,000～¥7,200,000に設定された価格についても、トヨタ・ファン、そしてMORIZOファンにとっては、決して法外な値段とはいえないだろう。