俊敏さと力強さを両立したスポーツAWDのための専用プラットフォームを採用。

レクサス「LBX」に追加された「“MORIZO RR”」に、大谷達也が乗った。標準モデルとの違いとは？ 【写真を見る】新型LBX“MORIZO RR”の各所（64枚）

本格的なスポーツカーを目指す

先ごろレクサスのコンパクト・クロスオーバーモデルのLBXに追加されたハイパフォーマンスバージョン、LBX“MORIZO RR”に試乗した。 MORIZOは、レクサス・マスタードライバーにしてトヨタ自動車会長でもある豊田章男のサーキットネーム。その名を冠したからには、レクサスの、いやトヨタ自動車の威信に掛けて傑作に仕上げなければならなかったであろうことは容易に想像がつく。 開発にはMORIZO自身のほか、トヨタGAZOOレーシングのドライバーにして豊田会長からの信任も厚いレーシングドライバー、佐々木雅弘も加わったとされる。 新型LBX“MORIZO RR”の成り立ちは、プラットフォームからして標準モデルとは異なるというこだわりようで、具体的には「GRヤリス」用のスポーツAWDプラットフォームをモディファイして採用。エンジンもGRヤリス用の1.6リッター3気筒エンジンをベースとして用いる。ちなみに、304psの最高出力と400Nmの最大トルクは、GRヤリスと新型LBX“MORIZO RR”で共通だ。 プレスリリースの冒頭には「上質な走りと洗練されたデザインを踏襲した、非日常の高揚感を味わえるハイパフォーマンスモデル」と、記されているので、「これは先日、試乗したばかりのホンダ『シビックRS』にそっくりのコンセプトだなぁ」と、思いながら走り始めたが、実際には、2台のキャラクターは大きく異なる。 端的にいえば、シビックRSが日常的な快適性を一切、犠牲にすることなくスポーツ性を追究したのに対し、新型LBX“MORIZO RR”は低速域でゴツゴツとした印象を明確に伝えるスポーティなセッティングだったのである。きっと、サーキットでもそれなりに楽しめるハンドリングに仕上げるためには、この程度のソリッドさが必要だったのだろう。 これについて前出の佐々木は「LBXの標準モデルがスニーカーだとすれば、“MORIZO RR”は身体を動かしたい時にも場所を選ばずに履ける、スパイクにもなれる運動靴のイメージ」と、語った。私にはこの表現のほうがしっくりとくる。そう、街中を闊歩するのに履くスニーカーというよりは、本格的にスポーツを戦うスパイクのほうが、新型LBX“MORIZO RR”のキャラクターを的確に表しているように思えたのだ。 したがってワインディングロードは得意中の得意。試乗日はあいにくの雨模様で路面はぐっしょりと濡れていたが、新型LBX“MORIZO RR”はそんなことお構いなしに、タイトコーナーでアクセルペダルを踏み込んでいってもタイヤが空転することなく、ステアリングを切った方向にグイグイと進んでいく。 最大トルクは400Nmもあるものの、駆動輪がわずかに滑り始めるとトラクションコントロールが滑らかに介入。警告灯を見ていなければほとんど気づかないくらいの穏やかさでエンジン出力を絞ってくれる。ここまで精度の高いトラクションコントロールは、ひょっとするとトヨタとして初めてのことかもしれない。