「職人としての集大成」大分・日田市役所に”建具アート” 閉業で転身決断の1級技能士が制作
大分県日田市役所の1階ロビーに建具を材料としたアート作品「地球時間」が展示されている。制作した石松建具店(同市日ノ隈町)は12月末に閉業し、担当した建具職人で1級技能士の荒川栄太さん(48)も介護業界に転身する。関係者は「日田にも高度な建具技術があることを多くの人に知ってほしい」と願う。 【写真】JR日田駅前広場に設置されたリヴァイ兵長の銅像 建具店は石松節生社長(75)の父、勇さん(故人)が1946年に創業。今は石松さんと妹の文子さん(70)、荒川さんの3人で主に神社仏閣の建具を作っている。2年前に節生さんが体調を崩したため今夏、年内での閉業を決めた。 2002年に入社した荒川さんは建具作り一筋。「将来は現代の名工になる意気込みでやってきた」という。閉業の話が出た後、独立することや福岡県大川市などの会社で働くことも考えたが断念。「悔しくて何度も涙した」が、自身の年齢や体力を考慮し、別の道へと進むことにした。 荒川さんの「職人としての集大成」となった「地球時間」は、木枠を球状に組み、各面に世界の国旗を時計の文字盤のように配置。地球の環境変化や世界平和といった「止まらなければいけない時間、動き出さなければいけない時間」を表現している。 本来は東京五輪が予定された20年の全国建具展示会に出品するつもりだった。コロナ禍と五輪の延期で展示会は開かれず、作成途中で倉庫にしまっていた。 閉業が決まり、今年10月の全国建具展示会に出品することに。市内の木彫刻専門店「力峰彫刻」の協力を得て完成させた。 展示会で「地球時間」は受賞しなかったが、主催の全国建具組合連合会事務局の担当者は「高度な手作り作品で芸術性も高い。閉業は残念」と評価する。 市役所には来年1月31日まで展示。その後は市複合文化施設アオーゼで展示する予定。 (床波昌雄)