松尾潔・国立大学の財務危機は「私立大出身の首相が続くから?」と疑問
全国86の国立大学でつくる国立大学協会が、財務状況が危機的だとして予算増額への理解と協働を訴える声明を発表した。この問題について、音楽プロデューサーの松尾潔さんは6月10日に出演したRKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』で「私立大学出身の総理大臣が続く現状と無関係と言えるのかどうか」と疑問を呈した。 ■「もう限界です」と悲痛な訴え 6月7日、全国に86ある国立大学でつくる国立大学協会会長で筑波大学学長の永田恭介さんたちが記者会見を開き、国立大学の財務状況についてもう限界です」という表現で悲痛な訴えをしました。国民に「予算を増額してほしい」と国立大学長たちが訴えるという、良くも悪くもおよそ学者のイメージにそぐわないものでした。 そこまでして理解と協働を求めた理由は、教育の機会均等を確保するという、基本的なことさえ満たされていない、光熱費や物価の高騰で十分な予算を捻出することがかなり難しく、厳しくなっているからです。 なぜこれまで口にしなかったことを今、学長たちが言っているかというと、運営費交付金が減額されたからです。実際に減額されたのは20年前、2004年に国立大学が法人化されたタイミングですが、それが悪い方向に進んでいると国立大学長たちは思っているということです。 ■「スピード感」の小泉政権による決定 20年前は小泉純一郎政権下で、行財政改革を次々とやっていきました。代表的なものは郵政民営化です。その時に「国立大学も教職員が12万人もいるじゃないか。これ全員必要なのか」といった話にもなりました。 当初は、国立博物館のような独立行政法人にするのはどうだろうという案が浮上しましたが、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治を守り、独自性を保つために「国立大学法人」にする、ということになりました。そして、運営費交付金は各大学の際限で決めるようになったわけです。 かつて国立大学は国の一機関で、予算や人事も文部科学省が決めていました。しかし、グローバルな見地に立ってみると、国が全てをコントロールするのは時代にそぐわないだろうと。小泉政権のキャッチフレーズでもあったんですが、「スピード感」を持って教育や研究を活性化するには独立すべきだという考えが占めていました。