渡邉恒雄さんが週刊朝日元編集長に語っていた「スクープの秘訣」から「女性遍歴」まで
■朝日の出版が悔しくて中央公論を買った 山口 今の奥さまと結婚される前には、ミス静岡とつき合っていたのに、婚約を破棄されたとか……。 渡邉 かみさんを口説くときに、「君は28人目の女性だ。これまでつき合った27人よりステキだ。結婚してほしい」と言って一緒になったんだ。24歳で女性を知って、結婚する29歳までの5年間はそれこそいろんな女性とつき合った。そのかわり、結婚してからは浮気したことはない。 山口 奥さま、美人ですよね。女優さんですか? 渡邉 劇団のな。でも50年たって、こんなしわだらけになっちゃった……。 山口 それは奥さまだって、50年前はもっとハンサムだったのにって思ってますよ。それにしても、意外と愛妻家ですね……。 渡邉 妻の認知症も完全に治ったわけじゃないんです。感情の表現が少ない。でも、それでもすごく愛おしい。妻のうれしそうな顔を見たくて、1日1回か2回ニッコリさせてあげようと努力しているんだ。 山口 いままでの悪事の罪滅ぼしですね。 渡邉 新聞記者ですからね。忙しかった時期は、寝る時間も違うし、どうしても生活の波長が合わなかった。お手伝いさんがいたこともあって、無視していたこともあった。こうなってしまうと、あのころもっと仲よくしていればよかったって後悔していますよ。 山口 ところで、渡邉さんは92年に朝日新聞の「VS朝日新聞」という企画の取材を受けられて、それまで自分は朝日に追いつけ追い越せでやってきて、新聞では質、量ともに追い越したけど、出版部門だけはどうしてもかなわなかったとおっしゃっています。私はナベツネさんにそう言われたことをとても誇りに思っていて、よく後輩に話して聞かせるんです。 渡邉 朝日の出版は伝統があるからね。読売にはない。だから悔しくて中央公論を買ったんだ。あれはもっともうまくいった友好的M&Aでした。中公の会長の嶋中雅子さんにあるパーティーで会ったとき、雑談で経営が大変そうだから合併しませんかと持ちかけたんだ。嶋中さんは親友の氏家齊一郎君(日本テレビ取締役会議長)の奥さんの1年先輩で仲がよくて、僕もよく知っていたから。嶋中さんがお願いしたいというから話はスムーズに進んで、読売の傘下に入った。中公の借金はかなりあったけれど、あれだけの知的財産を生かすことができた。大成功ですよ。 山口 渡邉さんは毎日忙しいのに読書量がすごいですね。時間をどう有効活用しているのですか。 渡邉 通勤時間を減らしたんです。片道1時間近くかかったのがいまは10分。だから毎日2時間くらい読書時間が増えた。午後10時ぐらいに自宅に戻って昔は午前2時3時まで本を読んでいたから。いまでも2日に1冊は読む。緊急に読まなければいけない本を枕元に置いているんだが、いま100冊ほどある。これから読売新聞で、戦争責任論についてキャンペーンをしようと思っているものだから、昭和戦争論が多い。40冊はある。ストレス解消にカントやニーチェの本も読まんといかんし。昨日はアインシュタインを読んだ。