『アド街』が30年目に突入。「徹底的に話を聞きまくる」姿勢が“愛され続ける秘訣”か
放送開始時からやり方は変わらない
放送開始時からこのやり方で1本分の番組を作り続けている。8人のディレクターが持ち回りで毎週土曜日の放送を担当する。2カ月に1回は担当した番組の放送があり、その後また2カ月をかけて新しい街を取材して、放送にこぎつけているのだ。 そして、番組を制作するうえで一番苦労するのは、現場のロケだという。街の情報をふんだんに盛り込んだ充実した内容だというのは、番組を見たことのある視聴者なら十分承知だろうが、ロケの日数は他の番組のディレクターから驚かれるぐらいボリュームがある。 「ロケだけで11~12日はかかります。時間がかかりすぎていて、時代にあっていないのかもしれません。長年携わっているカメラマンも職人気質の人が多いし、各ディレクターもレストランの料理を美味しそうに撮る、街の人を魅力的に見せる、ということにこだわる。お店の人には申し訳ない時もいっぱいあります」
一番多く取り上げた街は?
では、この30年で、一番多く取り上げた街はどこなのか――。 「新宿や横浜界隈は多いですね。テーマやエリアを少し変えて取り上げるので、最多がどこなのかは何とも言い難いです。セレクトする街はスタッフみんなで決めるのですが、ディレクターが『先日プライベートでこの街に行ったら面白そうだったからやってみたい』と言って決まる場合もありますし、この時期にはこの祭りがあるからやろうということで決まる場合も。単純に地図を見て、行ったことがない街、この辺りならできるかなと、取り上げてみることもあります」 取り上げる街のエリアについて、例えば麻布十番なら、街の人が「ここはもう麻布十番とは言えないよ」という場所は組み込まないようにしているそう。地元の人が「これくらいはいいんじゃない?」「ここまで含めても大丈夫」と言えば、範囲を広げることもあるが――。 「神田と日本橋は土地としては隣接していますが、ごちゃまぜにはしません。両方とも街の名前に誇りがあり、それぞれ違う魅力を持った、歴史ある街だからです。他にも歴史と伝統がある街は、より気を付けるようにしています」