前野隆司教授に聞く「幸せな組織づくりの秘訣」とは(後編)
■小さな炎から大きな変革へ: ウェルビーイングが創る幸せな社会
――最後に、ウェルビーイングの実現に向けて取り組もうとしている経営者の方々へメッセージをお願いします。 結論として言いたいのは、やっぱり「優しさ」と「愛」です。「戦い」や「意地悪」ではなく、優しさと愛で切磋琢磨する社会になっていくべきだと思います。 経営者の皆さんには、小さな一歩から始めてほしいです。優しさと愛を感じ、それを周りに広げていく。それは焚き火のようなものです。最初は小さな火でも、だんだん周りに広がっていく。今の社会では時々その火を消そうとする圧力も存在しますが、諦めないでください。 小さな火を燃やし続ける人が日本中、世界中にたくさんいます。皆さんも、その一人になってください。社員一人ひとりを大切にし、彼らの幸せを考えることが、結果的に会社の成長につながるのです。 私は、正義は必ず勝つと信じています。ですから、みんなで力を合わせて、優しさと愛に溢れた世界を作っていきましょう。それが、本当の意味での成功した企業、幸せな社会につながるのです。 ウェルビーイングの実現は、決して一朝一夕には達成できません。時には挫折や失敗を経験することもあるでしょう。しかし、その過程自体が組織の成長につながるのです。 繰り返しになりますが、重要なのは、ウェルビーイングを単なるプログラムや施策としてではなく、組織の文化として愛を込めて根付かせることです。時間はかかっても一度根付けば、持続可能な競争優位性となります。 また、ウェルビーイングの取り組みは、社会全体にも大きな影響を与えます。幸せな従業員は、家族や地域社会にもポジティブな影響を与えます。そして、そのような企業が増えることで、社会全体がより幸せになっていくのです。 経営者の皆さんには、ぜひ長期的な視点を持って取り組んでいただきたいと思います。短期的な利益だけでなく、従業員の幸せ、顧客の満足、社会への貢献、そして地球環境への配慮。これらすべてを包括的に考えることが、これからの時代に求められるリーダーシップです。 最後に、皆さん自身のウェルビーイングも大切にしてください。リーダーが幸せでなければ、組織全体の幸せを実現することは難しいのです。自分自身の幸せを追求しながら、組織と社会の幸せも追求する。そんな素晴らしいリーダーが増えることを心から願っています。 ウェルビーイングの実現に向けた皆さんの挑戦を、私も研究者として全力でサポートしていきたいと思います。共に、より幸せな社会の実現に向けて歩んでいきましょう。 ■伊藤芳浩(いとう・よしひろ) 特定非営利活動法人インフォメーションギャップバスター理事長。コミュニケーション・情報バリアフリー分野のエバンジェリストとして活躍中。聞こえる人と聞こえにくい人・聞こえない人をつなぐ電話リレーサービスの公共インフラ化に尽力。長年にわたる先進的な取り組みを評価され、第6回糸賀一雄記念未来賞を受賞。講演は大学、企業、市民団体など、100件以上の実績あり。著書は『マイノリティ・マーケティング――少数者が社会を変える』(ちくま新書)など。