「あれ、大事にされてない…?」観光地から塩対応されたご当地銘菓 若き5代目が果たしたリベンジとは
◆「不易流行」を体現する100周年記念ブランド
----2019年に後藤製菓さんは100周年を迎えました。その節目に向けての取り組みについてお聞かせください。 そのころ、営業活動で自社の説明をした際、ある大学の先生に「それって不易流行だね」と言われました。 父もその先代も、臼杵煎餅という大分県の小さな町の食文化の魅力を少しでも伝えたいがために、さまざまな商品開発や事業をしてきました。 本質は大切に守りつつ、新たなことを取り入れるという意味の「不易流行」という言葉は、会社の在り方を表すのにぴったりだと思えました。 そこで100周年の機会に、自分自身で、その「不易流行」を体現した商品を作ることにしたのです。 ----具体的には、どのような商品になったのですか? 「IKUSU ATIO(イクス・アティオ)」という臼杵煎餅のブランドを作りました。 「大分臼杵」をローマ字にして、逆から読んだ名前です。 かわいらしさで若い人にもアピールできるよう、サイズを小さくし、さまざまな味のバリエーションを展開。 パッケージの材質や形にもこだわりました。 これが大ヒットし、発売から半年で売り上げは通年比140パーセントを記録しました。 新商品だけでなく、既存の臼杵煎餅の売り上げも相乗効果で上がったので、本来伝えたい商品をしっかり伝えることもできました。 職人も新しく6人雇用しました。 承継前の一つの成功体験です。 ----新商品の開発について、従業員の方や、お父様は、どのような反応でしたか? いろいろ課題がありました。 小さく焼くために型を変えると、数百万円の投資が必要になる上、交換にも時間がかかります。 また煎餅には一枚一枚手で蜜を塗っていますが、小さいと熱い蜜が手につきやすくて無理だと言われました。 そこで、直接製造現場に入り、職人と一緒に解決法を探っていきました。 職人のように知識や経験などがあまりなかったから、先入観にとらわれずに考えられたかと思っています。 最終的には、既存のラインのまま小さく焼くことが可能になり、蜜を塗る工程も慣れれば問題なく、逆に通常より1人あたりの製造枚数が増えたほどです。 父は基本的には、「やりたいことはやればいい、失敗したら失敗から学べ」というスタンスでした。 だから、特に文句をいうことなく、私の思う通りにやらせてくれました。
■プロフィール
株式会社後藤製菓 代表取締役社長 後藤 亮馬 氏 1990年、大分県生まれ。大分大学卒。2013年、実家であり1919年から臼杵煎餅の製造・販売を手がける「後藤製菓」に入社。2019年、100周年を記念したブランドIKUSU ATIOを設立。煎餅製造時の副産物を利用しフードロスを解消したジンジャーパウダーで、農水省のフードアクションニッポンアワード受賞。有機農業の推進、地域社会への寄与などにも積極的に取り組む。本質を大切にしつつ時代に合わせて新たなことを取り入れる「不易流行」の精神に則り、臼杵煎餅の可能性を広げるため日々邁進している。