<欧州サッカー>今日から決勝T ユーロで起きている「異変」
グループリーグでは1試合の平均得点が初めて2点を切った
実力差が縮まった結果として、接戦が多くなったことを物語る数字がある。グループリーグの全36試合を終えた段階における1試合の平均得点は1.92にとどまり、過去20年に開催された欧州選手権及びW杯で初めて2点を切っている。 3点差以上の大差がついたのは3試合だけ。対照的に1点差で決着がついた試合が実に16を数え、全69ゴールのうち、後半の残り10分で決まったのが18ゴールと約26%を占めている。試合終盤になっても体力が落ちていない証といってもいいだろう。 前出の鈴木氏は「出場枠が増えたたことでレベルが落ちるのではと思っていたが、いい意味で裏切られた」とこう続ける。 「ミシェル・プラティニがUEFA(欧州サッカー連盟)会長に当選したときに公約として掲げていたのが、UEFAランキングの16位から最下位までのいわゆる弱小国のクラブに、チャンピオンズリーグ出場へのチャンスを与えることだった。実際に2009-10シーズンから新方式が採用され、それまでチャンピオンズリーグにほとんど縁のなかった国のクラブが質の高いトレーニングを取り入れるようになった。 そうした努力の積み重ねが代表チームにもいい影響を与えた結果として、選手たちのフィジカルコンディションが上がってきたと思っている。例えばアイルランド。W杯日韓共催大会以降は精彩を欠いていたし、私がケルンで観戦したW杯ブラジル大会予選ではドイツに手も足も出ないまま0-3で完敗している。 ペナルティーエリア内にほぼ全員が閉じ込められ、その周囲を『いつシュートを打とうか』といった具合に、ドイツがポンポンとパスを回す。まるでハンドボールの試合を見ているかのようだったが、今大会では見違えるような戦いを演じ、グループEの最終戦では後半40分にあげた決勝ゴールでイタリアを破り、初の決勝トーナメント進出を決めている。 1986年のメキシコ大会を最後に、W杯にも出場していないハンガリーが1位で突破することも果たして誰が予想したか。FWアーダーム・サライはブンデスリーガでなかなかレギュラーをとれない存在だし、他にいい選手がいるとも思えなかったが、90分間を通して全員がハードワークを実践できる素晴らしいチームに変貌を遂げている。FIFAランク2位のベルギーと対戦する決勝トーナメント1回戦では、番狂わせを起こす可能性も十分にあると思う」