「肥満の原因」は「遺伝」や「高脂肪食」だけではなかった!双子研究から見えてきた「太りやすくなる意外な食生活」
「お腹の調子が悪くて気分が落ち込む」という経験がある人は多いのではないだろうか。これは「脳腸相関」と呼ばれるメカニズムによるものだ。腸と脳は情報のやりとりをしてお互いの機能を調整するしくみがあり、いま世界中の研究者が注目する研究対象となっている。 【画像】「日本人はアメリカ人より発症率が高い」…「大腸がん」の「驚くべき事実」 腸内環境が乱れると不眠、うつ、発達障害、認知症、糖尿病、肥満、高血圧、免疫疾患や感染症の重症化……と、全身のあらゆる不調に関わることがわかってきているという。いったいなぜか? 脳腸相関の最新研究を解説した『「腸と脳」の科学』から、その一部を紹介していこう。 *本記事は、『「腸と脳」の科学』(講談社ブルーバックス)を抜粋、編集したものです。
腸内の細菌が変化したら肥満になった
メタゲノム解析という手法を確立したアメリカ・ワシントン大学のジェフリー・ゴードンは、腸内マイクロバイオータの機能を明らかにするために、メタゲノム解析に新しい研究手法を組み合わせました。 具体的には、動物の赤ちゃんを帝王切開または子宮を切断することで母親から無菌的に取り出し、その後、無菌状態を保ったまま飼育できる隔離装置の中で人工的に保育します。このようにして飼育した動物を無菌動物と呼びます。 そして無菌動物に、すでに種類のわかっている微生物を投与し、腸に定着させます。こうして作出した動物を使って実験したのです。 ちなみに、このような「その生き物が保有している微生物の種類がすべて特定されている動物」のことをノトバイオートと呼びます。 ゴードンは、無菌マウスにマウスやヒトの腸内マイクロバイオータを移植する実験を行い、腸内マイクロバイオータの生理作用を解析しました。具体的には、レプチンというペプチドホルモンが分泌されないために肥満や2型糖尿病を発症する「肥満マウス」と、正常なマウスの腸内細菌を比較しました。 その結果、肥満マウスではバクテロイデス門に属する細菌が少なく、逆にファーミキューテス門に属する細菌が多いことを発見しました。 次に、無菌マウスの腸に正常マウスまたは肥満マウスの便を移植すると、正常マウスの便を移植されたマウスと比較して、肥満マウスの便を移植されたマウスでは劇的に体重が増加し、体脂肪が約50%も増加したのです。 さらに、無菌マウスに肥満したヒトの腸内マイクロバイオータを移植すると、マウスが肥満化しました。