“歩く肺炎”マイコプラズマ感染症が流行 さらなる広がり懸念 医師が解説
マイコプラズマ感染症が流行しています。肺炎マイコプラズマという細菌が引き起こす感染症で、飛沫感染や濃厚接触で広がりますが、空気感染はしないと言われています。家族内など濃厚に接触する状況下で広がることが多く、主に幼児期から青年期にかけて罹患することが多い疾患です。2024年10月時点の厚生労働省のデータによると、通常の年間流行数を上回るペースで患者数が増加しており、過去の流行と比較しても規模が大きく、今後さらなる広がりが懸念されています。 潜伏期は2~3週間で、初期症状は発熱、倦怠感、頭痛、そして3~5日後に乾いた咳が始まります。咳は数週間続き、しばしば喘息様の症状を呈します。約25%に胸痛が見られ、消化器症状や皮疹がみられることもあります。比較的症状が軽いため「歩ける肺炎」として知られますが、これが知らず知らずのうちに周囲へ感染を拡げる要因にもなっています。一方で、胸水貯留を伴う重症化例や、肝炎、心筋炎、ギラン・バレー症候群など様々な合併症も見られます。 診断は、喀痰や咽頭ぬぐい液のPCRでの病原体の確認や複数回の血清診断が確実ですが、診断までに時間がかかり現実的ではありません。抗原検査もありますが、感度が低いため当院では行わず、症状や家族内での発生状況等を参考に判断しています。 治療には一般的な抗菌薬であるペニシリン系やセフェム系は無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗菌薬が使われます。特殊な予防法はなく、うがい、手洗いが有効です。 新型コロナ、インフルエンザが減って来たかと思えば、マイコプラズマが流行し、感染症との戦いはいつまで経っても終わりそうにありません。 ◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。