韓国世論ばかり注目。ここでも内戦“忘れ去られた”済州島イエメン人の思い
国際社会の注目を集めることなく、今も続くイエメン内戦
日本のニュースでは、時折イエメンのどこそこで空爆があり十数名亡くなったなど、まるで天気予報のように情報のみが断片的に流れ、内戦の実相が伝わることはあまりない。 奇しくも、済州島へのイエメン人流入問題で、メディアを通じ、韓国や日本から遠く離れたイエメンのことを知る機会は増えた。しかしながら、その報道はあくまでも韓国国内の難民問題にフォーカスされている。 だが、そもそも今韓国で起きている問題の根本には、泥沼化したイエメン内戦がある。「1000人以上の人々がサウジアラビアの空爆により殺され、救助に来ていた赤新月社までも爆撃を受けた。そんな非道なことが今も起きているのに、国際社会はイエメン内戦の現状に見向きもしない」 首都サナア出身のイエメン人青年は熱心に語った。 凄まじい爆撃が、イエメン特有の石造りのビルを一度に何棟も吹き飛ばす。空爆により無残に殺された市民の遺体は、焼け焦げ、バラバラになり、身元が特定できない── 。別の青年はこうした空爆や戦闘の様子が映し出された動画を見せてくれた。 規模は違えど、今も毎日のようにイエメン各地では多数の死者や被害が出ている。内戦を収束させる国際世論を形成させるためにも、韓国国内における難民問題だけでなく、内戦そのものに対しても多くの人々に目を向けてもらいたい。今もなお「忘れ去られた戦争」と呼ばれるイエメン内戦に── 。 【イエメン内戦】 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表しているデータによると2018年6月の時点で、イエメン人口約2700万人のうち、約200万人が国内避難民(そのうちの約9割は避難民としての暮らしが1年以上)として、このほか約28万人が難民として国内外での避難生活を余儀なくされている。 また、イエメンはアラブの最貧国と呼ばれ、内戦に伴い飢餓やコレラが蔓延していて、非常に深刻な人道危機に瀕している。人口の8割以上の約2200万人が何らかの人道支援を必要とし、「最悪の人道危機」と言われている。 ---------- 森 佑一(もり ゆういち) 1985年香川県生まれ。2012年より写真家として活動を始める。2012年5月には DAYS JAPAN フォトジャーナリズム学校主催のワークショップに参加。これまでに東日本大震災被災地、市民デモ、広島、長崎、沖縄を撮影。現在は海外にも活動の場を広げ、戦争や迫害により故郷を追われ難民として暮らす人々の撮影を中心に取材を行っている。HP: