進化するミシュラン授賞式、フランス料理「セザン」が新三つ星に
「セザン」シェフに初の三つ星
新三つ星に輝いたのは、職人的な手仕事で知られるダニエル・カルバートシェフのフランス料理「SÉZANNE(セザン)」。日本の季節感あふれる食材を、これまで働いてきたNY・パリ・香港などで学んだテクニックで仕上げることで定評があり、3月にはアジアのベストレストラン50でもアジアNo.1に輝いている。 受賞が発表された時、店は営業中で、三つ星の連絡を受けたメンバーが思わず厨房で歓声を上げると、それを耳にして察したゲストから「おめでとう!」という声と拍手が起き、温かな空気に包まれたという。授賞式の翌日、セザンを訪ねると、カルバート氏はいつものように早朝から市場に赴き、試作用のあん肝を仕入れていた。 「16歳の頃からミシュランに憧れ、シェフ人生において三つ星は最も大きな目標でした。料理人人生20年は長かったようにも感じますが、セザンはオープンしてからまだ3年。東京ならではの新しいスタイルを生み出そうと料理と向き合ってきた毎日は、一瞬のようにも感じられます。三つ星を受けたことで、やってきたことは正しかった、と証明されたようで嬉しいです。これまで以上に、料理の創作に力を注げます」と、晴れやかな顔で思いを新たにしていた。 ■『グランメゾンパリ』とコラボレーション 100年超の歴史をもつミシュランガイドの授賞式だが、今年は一層華やかに行われた。スペシャルゲストとして訪れたのは、高級レストランでミシュランの星を目指すシェフの姿を描いた人気ドラマ「グランメゾン東京」(2019年)で主演を務めた木村拓哉氏と玉森裕太氏。12月末に放映される映画『グランメゾンパリ』の告知も兼ねて登壇した。 木村氏は、「自分や演じた尾花という男は、この三つ星を目指して足掻きまくったけれど、手が届かなかった。三つ星の本物の盾を持たせていただき、気持ちが込み上げてくるものがありました。ステージでみなさんに盾を手渡し、その迫力を感じ取ることができました。お料理をいただいていないのに、人柄や真剣さが感じ取れたと思っています。貴重な場に参加させていただき感謝しています。皆様、おめでとうございます」と語った。 筆者は世界のシェフにインタビューする機会が多いが、意外なことに海外でも日本の「料理の鉄人」などのテレビ番組をきっかけで料理の道を選んだ、という人が少なくない。最近も、ラテンアメリカのベストレストラン50に選ばれているコロンビア・ボゴタの人気店「エル・チャト」を訪れたが、店内に陳健一氏の写真が飾られていた。「コロンビアで字幕付きで放映されていた『料理の鉄人』で見た陳さんが憧れのシェフ」なのだという。