太いし重いしぶっちゃけ重労働! EVの急速充電ケーブルはもっと「細くて軽量」にできないのか?
急速充電器のケーブルは重い!
電気自動車(EV)に急速充電する際、充電器に備えられた充電ケーブルは太くて重いのが難点だ。コネクターも、普通充電用に比べ、大きく頑丈にできており、それも重さのひとつといえる。 【画像】EVオーナーの悲願ともいえる「走行中給電システム」(実証実験)の画像を見る 200ボルト(V)のコンセントから、家庭などで行う基礎充電は、車載の充電ケーブルなどを使うが、そのケーブルやコネクターは比較的軽い。それと比べても、急速充電器のケーブルは格段に重い。 理由は、充電のために流す電力の大きさによる。 基礎充電として行われる普通充電は、3~6kWであるのに対し、現在広がっている急速充電器は50kWが多く、さらに高出力への要望があることから、90kW、150kWという大電力がケーブルを流れる欧州などでは、250kWといったさらに高性能な急速充電器が求められ、日本でもそれを望む声がある。 いずれにしても、急速充電器で使う電力は、普通充電の10~30倍くらいか、それ以上になる。 電気の流れは、川にたとえることができる。少ない水しか流れない川の幅は細い。逆に、一級河川と指定されるような大河は川幅が広い。電気も、流れる量によってケーブルの太さが細くなったり太くなったりする。 加えて、流れる電気の電圧によっても、流れる電気の量=電流に違いが生じる。200Vの普通充電では、3kWなら15アンペア(A)、6kWなら30Aという電流量だ。 急速充電になると電圧は500V以上だろう。500Vと仮定して、50kWなら100Aの電気が流れる。同じ急速充電ケーブルでも、太さに違いがあるとすれば、細めのケーブルは使われる電圧がもっと高いと考えられる。 この事例も、川の流れにたとえられる。急峻な山を流れる上流の川は、標高差(電気でいえば電圧差)があるので、川幅は細い。下流へ流れていくにしたがい標高差が少なくなるので、川幅は広がる。
コネクターも大柄にならざるを得ない
このことから、充電ケーブルを細く軽くしたければ、電圧を上げ電流量を下げるしかない。しかし、それには電圧を高める昇圧が必要になるだろう。また、一気に大電力を供給するには、充電開始前に電力を貯めておく蓄電設備も追加で必要になる。それらは、設備投資額を高めることにつながる。 適切な投資額で採算を確保しながら利便性の高い急速充電性能を提供する、その妥協点として充電ケーブルの太さや重さが定まってくるといえる。 もうひとつ、充電ケーブルの先のコネクターの大きさも、ケーブルと同様に供給する電力が大きくなるほど、接点の面積を確保し大柄にならざるを得ない。また、充電器とEVとの間で情報交換する通信機能も重要になり、大電流を流しても短絡(ショート)を起こさない、あるいは過充電になってしまわないよう、リチウムイオンバッテリー側の情報を頻繁に監視することになる。 その点、日本発のCHAdeMOは、コネクターに通信専用の接点を設けている。これによって、充電中も充電器とEVとの間で状況確認の通信ができるのである。それが安全対策になっている。ただし、コネクターは、充電用のほかに通信用の接点をもつため、大がかりになる。それはコネクターの大型化につながり、重さが増える要因といえる。 充電ケーブルやコネクターは、老若男女が使えるよう、軽いに越したことはない。そのためには、ケーブルを上から吊るして重さをあまり感じないようにするなど、充電器の設置の仕方も解決策のひとつになる。 ほかに、情報確認するモニター画面の見やすさを含め、身長の違いのみならず、たとえば車椅子を使う人の目線でも見やすくする配慮が重要だ。それはケーブルの扱いやすさにも通じ、老若男女に加え、健常者も障害者も等しく充電できる環境整備が求められる。 将来的に、非接触充電が実用化されれば、ケーブルを充電口につなぐ作業がいらなくなるので、利便性は大きく前進するだろう。ただし、非接触充電は、周辺施設(たとえば自動ドアなど)への電磁波の悪影響(自動ドアなら誤作動)が出ないよう対策を講じる必要がある。
御堀直嗣