5年に一度の年金制度改正 “主婦(主夫)年金”見直し提言…厚生年金“拡大”論も
2)第3号被保険者〝主婦(主夫)年金〟制度縮小も…厚生年金の適用拡大か
厚生年金の適用を拡大し、いわゆる〝主婦(主夫)年金〟とも呼ばれる第3号被保険者を縮小する議論が出ていることについて、田中秀明氏(明治大学・公共政策大学院専任教授)は以下のように分析した。 日本は今後50年間で人口が4000万人減る試算で、そのうち3000万人が働く世代だ。勤労世代の大幅な人口減少を乗り越えるためには、可能な限り、より多くの人がより長く働くことしかない。3号被保険者制度は昭和の仕組みであり、働くことにブレーキをかけている。共働き世帯が多数を占めている現状に適応しておらず、抜本的に改革する必要がある。 しかし、今の年金審議会の議論を見ていると、厚生労働省は抜本的な改革を行うつもりはないだろう。審議会に提出されている資料には、「見直しの優先度は低い」と書かれているからである。複数の改革案が出てはいるが、基本的には、所得のない主婦から保険料を徴収するものであり、現実的ではない。あるいは、世帯主が負担する案も出ているが、家族単位で保険料を徴収するものであり、時代錯誤である。3号問題は、これまでもさんざん議論してまとまらなかったのであり、今回も合意は難しいだろう。 第3号被保険者問題は、保険制度を前提とする限りは解決できない。厚労省が保険制度ではなく、他の国のように、基礎年金を税で賄うという仕組みを導入しない限り、この問題は解決できない。
加谷珪一氏(経済評論家)は、この動きの背景を以下のように分析する。 主婦年金については縮小の動きが提言されているが、なかなか難しい。保険や事業は本来、負担者と受益者が一致していなければいけないが、こういう制度を作ったために、負担のない人が受益しているという構造ができてしまっている。昨今は共働きが主になってきているので、段階的に縮小しなくしていこうというのは当然の流れだとは思う。 しかし、現実問題として昭和の時代のような、専業主婦世帯で働かなくてもよい環境下にある人ばかりではない。今の日本は、ジェンダーギャップも解消されつつあるが、世帯の中で家事や育児、親の介護などの仕事の主な担い手が、女性となっているケースは非常に多いため、フルタイムで働きたくても働けないという世帯も多い。 そのような人たちは頑張って働こうと思ってもフルタイムで働けないので、年収が130万に達しない。すると、いやが応でもこの3号被保険者になって、その分、年金をもらわないと生活できないという方が相当数いらっしゃる。そういう人たちから保険料を取るのかという話になると、政治的に相当ハードルが高い。時間をかけて、どのような救済措置を取っていくのかというところをしっかりと提示しないと、話が進まないのではないか。