3人のアウトドア達人が語り尽くす!これまでに出合った「絶景キャンプ場」とは
ストーリーが絶景を生み出す
沢木:いままでキャンプをしてきた中で、とくに記憶に残っているのはどんな絶景ですか? こいし:鹿児島県のトカラ列島の小宝島でキャンプしたときの景色かな。小宝島にはキャンプ場がなくて、役場に聞いたら、「そこらへんでやっていいよ」というので、海岸にテントを張ってキャンプをしたんです。島は人口50人ぐらいで、商店ひとつありません。その旅自体ずっと孤独でつらかったのですが、ひとりで無人島に冒険に来ちゃったなと怖さを感じるぐらいでした。 そのテントサイトで、流木で焚き火をしていたときに見た夕暮れの光景が忘れられません。私だけの旅をしているという自分の行動への感動、空と海のスケール感、流れていく雲とそれを赤く染める夕日。言葉にうまくできないけれど、ひと言でいえばエモかったんです(※1)。あの時間と空間、音、潮の香り、焚き火の温もり……五感で感じた絶景がいまも鮮明に記憶に残っています。 沢木:そこにいたるまでのストーリーがあったからこそ、絶景となったんですね。 田中:それそれ! ストーリーがあると絶景になるんですよ。「体験する」と「ストーリーがある」が、絶景のキーワードだと僕は思うな。天竜川の支流に気田川という清流があります。僕は幼いころから毎年ゴールデンウィークになると、家族や父の友達家族と気田川にキャンプに行きました。みんなでカナディアンカヌーで川下りして、たまにひっくり返ったりして、キャンプサイトに戻って、「あれはやばかったね」とか笑い合いながら夕ご飯を食べました。 その光景・空間が僕の記憶の中の一番の絶景ですね。見る絶景ももちろん心に残るけれど、一緒に遊んだ家族や仲間と自然の中で体験したことを美味しいご飯を食べ美味しいお酒を飲みながら語り合う――そんな時間・空間のほうが絶景としてより心に残っています。 沢木:話を聞いているだけで、その絶景が目に浮かんでくる気がします。自然を体験しに入る絶景、五感で感じ取る絶景、ストーリーを紡ぐと現われる絶景……。僕の中の絶景観がとても広がりました。 田中:絶景は見るだけのものではない! こいし:「ドーン!」という絶景だけでなく、自然の中に何かしら絶景は発見できる! 沢木:つまり、どのキャンプ場でもそれぞれの絶景が楽しめるってことですね! ※1 エモーショナルが由来で、感動的な様。 協力/カンセキ WILD-1事業部、オンウェー 構成/鍋田吉郎 撮影/小倉雄一郎 (BE-PAL 2024年5月号より)
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