在り方問われるPTA活動 地域住民が協力の事例は? 静岡県の小学校、自由度高い派生組織/中庭再生に参加募る
少子化や共働き世帯の増加を背景に近年、在り方が問われているPTA。新型コロナ禍を経て縮小の動きもある中、現役保護者である会員だけでなく、地域住民の力を借りて活動充実を目指す静岡県内団体を取材した。 三島市立沢地小ではPTAの派生組織「粋なおやじの会」がさまざまな行事を行っている。市内の近隣校に同様の会があったことなどから2014年度に現役保護者のグループとして発足。わが子が卒業した保護者OBも引き続き参加するようになり、現在は会員40人の約半数を占める。 地区の恒例行事だった1月のどんど焼きを復活させ、6月には不要なおもちゃを持ち寄る「カエルキャラバン」も実施する。夏休み中の防災体験合宿は児童約100人が参加する人気イベント。学校に1泊して料理したり体育館に段ボールを敷いて寝たりして、避難所生活を具体的にイメージしてもらうのが狙いだ。 過去にも代表を務めた吉岡武志さん(48)は、新型コロナ禍で自粛となった各種行事の復活を託されて再登板した。わが子は既に中高生だが、かつての行事のにぎわいを振り返り「児童の期待にまた応えたい」と使命感を口にする。 派生組織ゆえ、任期や定員に縛られず活動の自由度が高い点も利点という。やりたい人ができる時に動く。子どもも大人も楽しいことをやる。助け合いと楽しさを重視した活動は今年で10周年。「今後も仲間を増やしたい」とほほ笑む。 磐田市立豊岡南小PTAは、住民の協力を得て中庭再生プロジェクトに取り組んでいる。約50年前に整備された中庭は、富士山や南アルプスから河川が流れて駿河湾に注ぐ本県の地形を、植栽や池で再現していた一角。児童が集う同校のシンボルだったが、いつしか土砂で埋もれ、生き物も姿を消した。 心を痛めたPTAが昨年度、再生を始めた。広さ約400平方メートルの中庭で土砂を撤去し、市内サッカー場から芝生メンテナンス時の廃土を譲り受けて再生芝生の敷設を進める。 完成は創立150周年となる来年度を予定。地域全体に祝福ムードを広げ、新型コロナ禍で薄れた地域のつながり再構築のきっかけにしようと今夏初めて、回覧板で地域住民に協力を募った。その結果、今年9月の活動にはPTA会員以外に、近隣から50~80代の10数人が参加した。 PTAの秋山玉光会長(47)は住民に謝意を示し「少子化で保護者数が減り、地域との関係がより大事になっている」と指摘。同時に保護者が地域活動に積極的に参加する必要性も語る。この活動がきっかけとなり、住民主催のラジオ工作イベントに児童が参加するなど、新たな地域のつながりも生まれたという。 <メモ>静岡県PTA連絡協議会によると、少子化により県内のPTA会員数(加入する公立小中の児童生徒数)は年々減少している。1985年には50万1986人だったが、本年度は24万8401人と半減した。最大の要因は少子化で、加入は強制でなく任意という意識の浸透も背景にある。 全国では近年、保護者の負担軽減やなり手不足を受けて、PTAに「Community(地域)」の「C」を加えた組織「PTCA」に移行する動きも見られる。
静岡新聞社