デジタルとアートが開く未来を〈金沢21世紀美術館〉で見る|青野尚子の今週末見るべきアート
この惑星はデジタルで覆われている。そこで生まれるアートは私たちをどう変えていくのだろう? 「DXP(デジタル・トランスフォーメーション・プラネット)―次のインターフェースへ」はデジタルとアートとの関係からこの星の行方を探るもの。宇宙船のような建築の〈金沢21世紀美術館〉で開催中です。 【フォトギャラリーを見る】 展覧会タイトルの「DXP」は「デジタル・トランスフォーメーション・プラネット」の頭文字をとったもの。丸い形の〈金沢21世紀美術館〉が惑星のように見えることも関係している。このグループ展に参加しているのは23組。アートだけでなく建築やファッション、サイエンス、ゲームなどさまざまなジャンルを横断しているのが特徴だ。
会場に入ってすぐのところにあるモニターには奇妙な服装で踊り狂う若者の姿が映し出される。これはレトロフューチャーをテーマにしているアーティスト、草野絵美の作品だ。画面に登場するのは実写ではなく、「モボ・モガ」「フーテン族」「タケノコ族」など、80年代以前のストリートファッションの説明文を画像生成AIに入力し、ニューラルネットワークで調整したもの。ありそうでなかった過去が未来に登場するかもしれない、そんな不思議な感情にかられる。
《Alter》(オルタ)は東京大学 池上高志研究室が2016年から開発を続けているヒューマノイドロボット。今回は3号機である《Alter3》が展示されている。この《Alter3》には哲学者、科学者、小説家、芸術家、ミュージシャン、10歳の子どもの6つの人格がプログラミングされており、鑑賞者が話しかけると内容に応じていずれかの人格が返事を返す。この対話を通じて学習を積み重ね、より人間らしい自然な会話ができるようになるのだという。
建築系スタートアップ企業、VUILDは美術館の中に「ラボ」を作った。このラボでは来場者が言葉を入力するとAIが3Dデータに変換し、パーツを作ってくれる。それを組み立てると椅子になる仕組みだ。入力する言葉は「犬」などの具象物でもいいし、「優しさ」といった抽象的な単語でもいい。VUILDはテクノロジーによって誰もが作り手になれる「建築の民主化」を目指している。AIと建築家の協働で建築の自由さを取り戻そうとしているのだ。