高橋洋一氏が語る「トランプ復活後」の未来 円安から円高への転換で「日本は国際競争力が低下し、輸出が減少する」
ドナルド・トランプ氏の米大統領への返り咲きが決まり、世界の次の関心はその経済政策に移っている。今後の展望について、1期目のトランプ氏と気脈を通じた安倍晋三・首相(当時)を官邸スタッフとして支えた元財務官僚の高橋洋一氏(嘉悦大学教授)が、インタビューに答えた。 【写真】元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏。小泉純一郎内閣や安倍晋三内閣を官邸スタッフとして支えた経験を持つ
――トランプ勝利を受け、円安ドル高、米国株の大幅高など次期政権の政策を考慮に入れた「トランプ・トレード」の動きが注目されている。 「特に為替については、これからしばらく円安ドル高に動くでしょうが、こうした取引が一巡すると、円高ドル安に転じると見ています。ドル高(円安)が先行するのは、『すべての輸入品に関税をかける』というトランプ氏の公約が先に意識されるから。 アメリカ国内のインフレ率は低下傾向にありますが、輸入関税導入による物価高への影響が意識されると、インフレを再び加速させる可能性がある。足元のインフレ率の低下の流れを相殺するような形になって、ドル高(円安)を誘うのです。 ただ、この流れはあくまで一時的で、すぐに円高ドル安に転換する。というのも、『アメリカ・ファースト』を掲げるトランプ氏は国内産業の国際競争力を高め、輸出を増やすドル安政策を志向しています。政権が始動すれば、ドル高(円安)を抑え込もうとあらゆる手を打ってくるでしょう。 自国通貨安を志向する金融政策は、『近隣窮乏化政策』とも呼ばれています。通常、ドル安ならばアメリカの輸出は増加する一方、相手国となる日本は逆に国際競争力が低下して輸出が減少し、悪影響が出るリスクがある」
石破首相は「安倍さんのような交渉をするのは無理」
――選挙で掲げた公約によれば、トランプ氏はすべての輸入品に一律10~20%の追加関税をかけるほか、中国からの輸入品には60%超の関税をかけると主張。影響を受けそうなタイのバーツや韓国のウォンの価格が下落しています。 「新政権が動き出せば、アメリカはまずは中国を『為替操作国』に指定し、追加関税などの制裁措置を検討することになるはず。もちろん、どのような内容の制裁を課すかは現段階ではわかりませんが、1期目の政権の時と同じ手順を辿ると考えることができると思います」 ――トヨタやホンダといった日本の自動車メーカーが生産拠点を置くメキシコへの追加関税は100%と、より条件が厳しい。 「前政権時の例を見れば、ブロック経済化で対峙する中国とそれ以外の国では分けて検討するでしょう。後者の中国以外の国の条件は、交渉しだいで変わってくる。この点は、トップ同士の話し合いがどうなるかにかかっていると思います。 前政権時は、安倍さんとトランプ氏の相性が世界のほかのどの首脳と比べても良好で、追加関税で問題が生じることはほとんどありませんでした。もちろん、今回も日本政府はそうした構えで交渉に臨みたいところですが、石破(茂)首相にはまず無理。『石破氏だけは総理にしてはいけない』と安倍さんが発言していたことはかなり報じられてきましたから、当然、トランプ氏にも伝わっているはずです」 ――“トランプ減税”によって個人や企業に恩恵をもたらし、経済成長を促すのが新政権の経済政策の柱と言われるが、こうした積極財政政策によってインフレが再燃し、金利が膨らむとの見方もある。 「インフレが加速すれば、中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は金融政策を引き締めようとしますが、トランプ氏は逆に金利を抑え込みにかかるのではないかと思います」