ラグビーW杯直前マッチで主力2人が故障し南アに完敗の日本代表は本当に世界と戦えるのか?
もちろん福岡とマフィの欠場は望まれることではない。いずれも替えの利かない得点源だっただけに、医療スタッフの献身が求められるばかりだ。ジョセフも言葉を濁すほかない。 「それ(福岡の怪我)が(チームの)パフォーマンスにも色々な影響を与えました。マフィは1~2週くらいで戻れる。フィジカルなゲームだった故にこのような怪我が出たと思いますが…。(怪我については)これしか、言えることはありません」 収穫はある。 スクラムは前半31分に押された1本を除けば概ねイーブンで組めた。日本代表はもともと低く小さな塊となるスクラムを目指していたが、優勝した7~8月のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)では“ぺしゃんこ”になるたび「日本代表が崩した」との印象から反則を取られていた。それを受け、この日までに高さなどを微修正していた。右プロップの具智元の「全体的にはそんなにプレッシャーがなく組めたけど、もっとうまくできた」という展望もまたよい。 モールへの防御も機能。起点となるラインアウトでは捕球役と空中で競り合い、相手が塊になる前の段階で地上にいるフォワードが次々と刺さる…。そうしてピンチを防いだ前半34分頃のワンシーンは、良い成功事例となりそうだ。 ワールドカップで対戦する格上のアイルランド代表、スコットランド代表もまた、このモールが得意なチーム。フッカー坂手淳史は声を張った。 「ラインアウトを競ってプレッシャーをかけ、モールを止めるということがいい形でできたと思います」 ただし、終盤は被インターセプトなどから加点され、日本代表がスコアしたのは向こうのミスに反応してトライを決めた後半20分のみ。本番までの約2週間で、この日に出た課題をどの程度まで修正できるか。 リーチは会見で「この試合でティア1(強豪国)の圧力、強さが改めてわかったので、ワールドカップの準備にはとてもよかった」と強調。ここ数か月で醸成された一体感を背景に、こうも言い切った。 「スタッフも課題に合った練習を考えてくれるし、明日の準備ももうしてあって、リーダーミーティングも常にしている。このチームの修正能力はとても高いです」 田村は、小さな積み重ねを止めないという。 「(改善点は)細かいことです。ひとつのパス、ひとつのブレイクダウン(接点)、ひとつのランニングコース…。(日本代表は)大きくも速くもないですけど、細かいことにこだわればすごくいいアタックができる。ただ、そこを怠ると、ただでかい相手にパワーで負かされちゃう。…魔法はないです」 日本代表は以後、しばしの休息を挟みながらも都内で課題の改善に努める見込み。そして9月20日、東京・味の素スタジアムでのロシア代表戦からワールドカップをスタートさせる。 (文責・向風見也/ラグビーライター)