「ママ、ろれつが回ってないよ」脳出血で40周年コンサート直前に緊急搬送…歌手・井上あずみが意識を失う前に娘にかけた言葉
そんな私を見て夫は「このままじゃダメだな」と考えて、退院の目標を決めてくれました。「今の状態で帰っても困るだろうから、歩いてトイレに行けたら帰ろう」と。不思議と、そこからめきめきと元気になっていきました。とてもいい病院でしたけど、やはり思うように体が動かないのはストレスでしたね。退院してからのほうが圧倒的に元気になりました。うちに帰ると夫も娘も超スパルタで「車いすが欲しい」と言っても出してくれない。「甘えは禁止です」とさんざん歩かされて。それはそれでつらかったですけど(笑)。
■「甘え禁止」娘から受けるボイトレのスパルタ特訓も ── きっと愛のあるスパルタに違いありませんね。音楽系の大学に通われているゆーゆさんによるボイトレも受けてらっしゃるそうですね? 井上さん:まだうまく発音できなかったり、声帯の使い方を忘れてしまったりしているため、娘からボイトレの鬼指導を受けています(笑)。愛ある鞭で本当に厳しいんですよ。「もっと大きい声で!」と大声で指示されたり、「難しい」というと「気のせいです」と言われたり。体力も集中力もないから「やだ」って言うと「やだじゃないでしょ」って。
── たしかにスパルタですね(笑)。お母さんとしても歌手としても、井上さんをそばで見てきた娘さんだからこそ、わかる加減があるのかもしれませんね。 井上さん:それは間違いないと思います。「せっかくいい声帯なんだから、こうすると声が出しやすいよ!」とか、私も勉強になることもあって。というのも、小さいころから娘を友人のボイストレーニングに通わせてたんです。幼くても、どんなに疲れていても鬼のように「行きなさい」と言ってたんですけど、それがいま、私に返って来てます。彼女は忍耐強かったなぁと、される側になって思います。「小さいころに厳しくせず、もっと優しいママでいればよかった」なんて(笑)。
夫にも言われたのですが、私は特訓して歌がうまくなったわけじゃなくて。どちらかというと勘で歌ってコツをつかんできたところがあるので、人に歌い方をうまく教えられないんですよ。娘に教えるときも「できるよね?」というけど、娘はわからないといった具合で。でも逆に、娘は先生について、メソッドに従ってしっかり学んでいるので、的確なんです。習った後は確実にうまくなる。声の出し方のコツを教えてくれたり。口の形はこうとか、ここを響かせるとか。そのおかげで、倒れる直前よりももっと昔の声に近くなっていきました。やはり娘は私の歌い方をよく見て聞いて知ってますから、目指す完成形がイメージできているわけです。