センバツ2023 2回戦 氷見、全力プレー 先制、粘り、持ち味発揮 /富山
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれている第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は第6日の24日、21世紀枠で30年ぶり2回目の出場の氷見(富山)が初戦の2回戦で山梨学院と対戦し、1―4で惜敗した。春夏通じて初となる甲子園1勝は果たせなかったが、聖地で躍動するナインの雄姿を見届けた大応援団からは、健闘をたたえる惜しみない拍手が送られた。【野原寛史、加藤昌平】 「GO! GO! 氷見高!」 チームカラーの水色に染まった一塁側アルプススタンド。生徒や学校関係者、地元の氷見市民らの応援団がバス24台で駆けつけ、ブラスバンドや卒業したばかりの元野球部員らが中心となり大声援を送った。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ナインにとっては高校入学後、初めて聞く声援。背中を押されるように、初回から持ち味を発揮した。 一回2死から、青野拓海が放った鋭い打球が敵失を誘い、4番の大沢祥吾が右前打でつないで一、三塁に。続く橋本瑛信は追い込まれながらも外角低めの直球を振り抜き、二塁手の頭を越える先制適時打を放った。父の謙信さん(43)は「得点につながって良かった。このまま思い切ってプレーを」と話した。 エースの青野は序盤から制球に苦しむ。二回に2本の適時打を浴び逆転を許したが、その後は要所を締め、強力打線相手に踏みとどまった。野手も強烈な打球をさばいてピンチを脱するなど、粘投の青野を支えた。 それでもさらに2点を加えられ、3点を追う九回2死。正水海成が右中間を破る二塁打を放つと、スタンドは大きく盛り上がった。しかし後続が倒れ、ゲームセット。応援団は一瞬沈黙したが、すぐに選手たちをねぎらう声援と拍手が飛んだ。 大沢の父、和寛さん(46)は「最初は粘り強く戦えたが、中盤からは相手投手のペースだった。夏に甲子園に帰ってこられるよう頑張ってほしい」と語った。父が氷見高そばに住んでいた縁で30年前も観戦したという大阪府高槻市の小間捷之介さん(81)は「30年前より応援に気合が入っていてびっくりした。自分が元気なうちにまた甲子園に来てほしい」とエールを送った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇夏目指して体鍛える 青野拓海投手(3年) 夢に見た聖地のマウンドは、悔しさの残るものになった。相手の強力打線を6安打に抑えたが、自身と野手の失策も絡み計4失点。試合後は「実力不足だった」と繰り返した。 試合の5日ほど前から調子を落とし、投球フォームが安定しなかった。最速143キロの直球が武器だが、この日は130キロ台前半。制球もばらついた。1点をリードしていた二回裏には、変化球が甘く入り2適時打を浴びる。「体が前に突っ込まないように調整しようとした」が、球威は戻らなかった。それでも毎回走者を背負いながら、調子が悪いなりに投球を組み立てて試合を作った。「球速が出なくても、打球を詰まらせることはできた」と収穫もあった。 一方、中軸打者としては2安打を含む3出塁で、先制のホームも踏んだ。山梨学院の好投手・林謙吾相手にも「高めの球をさばいて、低めのボール球も振らなかった」と、こちらは実力を発揮できたと振り返る。 それだけに、投手として本調子で臨めなかったことが悔しかった。最後の夏に向け「帰ったらまず走り込んで、体のバランスを鍛えたい。球速も145キロ以上を目指す」と宣言。必ず戻ると誓い、甲子園を後にした。【野原寛史】