新型ホンダ・フリードはガソリンモデルも悪くない! ハイブリッドとの価格差、34万9800円に迫る
フルモデルチェンジしたホンダの新型「フリード」に、今尾直樹が公道で乗った! 次はガソリンモデルをリポートする。 【写真を見る】新型フリード・エアーEXの細部(15枚)
なにをフリードに求めるのか?
横浜で開かれたホンダ新型フリードの公道試乗会でテストした2台のうちの1台、エアーEXの1.5リッター・ガソリン3列6人乗り、4WDの印象をここでは述べる。 新型フリードの受注状況における標準タイプのエアーとクロスオーバー・タイプのクロスターの比率は、ホンダ広報によると、7:3でエアーが売れているという。それも、エアーの上級仕様のエアーEXが7割弱という高い人気だそうだ。ハイブリッド(e:HEV)とガス(ガソリン仕様)の比率は85:15で、ハイブリッドが圧倒的大多数を占める。ハイブリッドはガスより機構が複雑で高価なリチウム・イオン電池を使っている分、価格も35万円ほど高いというのに……。 新型車の発売初期は高いグレードから売れるというけれど、新型フリードでもおなじ現象が見てとれる。 このクラスで唯一のキャプテンシートの人気も高く、73%がキャプテンシートの6人乗りだという。ベンチシートの7人乗りはたったの9%、クロスターにのみ設定されている2列5人乗りは18%と意外に多い。 試乗車は冒頭記したように、人気のエアーEXの、しかし、ハイブリッドではない、ガソリンで、しかも4WDという少数派だ。FF(前輪駆動)と4WDの受注比率は……すいません。聞いていないけれど、雪国向けの、いわゆる生活4駆ゆえ、台数自体はそう多くないはずである。さりとて生活4駆だからこそ、なくてはならないものだ。 ホンダは新型フリードでも、電気モーターで後輪を駆動する電動4WDではなく、プロペラシャフトで後輪を駆動する機械式を採用する。そのほうが雪に強いからだ。「リアルタイム4WD」と、呼ぶ、ホンダの方式は、アクセルをオンにするとプロペラシャフトに設けられたクラッチが油圧ピストンで押しつけられてつながり、後輪に駆動力を伝える。システム自体は先代とおなじながら、制御が改良されて、後輪へのトルク配分は10%増になっている。 ただし、今回の試乗ではドライ路面ということもあって、特に4WDであるという実感は得られなかった。というのが正直なところである。逆に申し上げれば、4WDだけど、FFとおなじようにドライブできる。高速安定性は高い……ような気もしたけれど、「e:HEVクロスター」のFFだって同様に高かった。 一般に4WDのほうがFFより乗り心地がいいと感じるのは、リヤが若干重くなるからだ。新型フリードの場合、FFのリヤサスペンションは車軸式、いわゆるトーションビームであるのに対して、4WDのリヤはド・ディオン・アクスルを採用している。ド・ディオンはデフをボディ側に固定しているのでバネ下が軽くなり、乗り心地がよくなるとされる。 ということだけれど、筆者の見立てでは、この日に試乗したe:HEVクロスターのFFと較べて、エアーEXのガスの4WDは大きくは違わない。心持ち軽快感がある、とは思う。だけど、エンジン車ゆえ、ハイブリッドのe:HEVより微妙に振動と騒音がある。エンジンがつねにまわっているから当然だ。使い勝手を考慮して、アイドリング・ストップが省略されていることもある。そのエンジンの微妙な振動と騒音が、乗り心地に微妙な影響を与えているような気がする。 これ、先にe:HEVに乗っていて、それと比べちゃうからそう感じるわけで、ガスが先だったら、気にならないかもしれない。それほどe:HEVクロスターの静粛性は高く、乗り心地に雑味がない。それに較べると、ガスはつねに、“もわ~っ”と、している。ま、それがエンジン車というものだ。 フリードのエンジニアによると、サスペンションの設定には4種類ある。e:HEVのFFと4WD、ガス(ホンダではガソリン車をこう呼ぶ)、FFと4WDである。これらはスプリングとダンパーのセッティングがそれぞれ異なる。ただし、FFと4WDの違いよりもe:HEVとガスの違いのほうが大きいという。それは車重が違うからだ。 たとえばフリード・エアーのFF同士で比べてみると、e:HEVの車重は1460kg、ガスは1370kgと、90kg違う。エアーEX同士だと、1480kgと1380kgで、その差は100kgに広がる。エアーEXのFFと4WDだと、1480kgと1560kg。あ。意外と違う。それでも、その差は80kgで、e:HEVとガスの違いのほうが大きい。 ガスは軽い車重に合わせて、より軽快に感じるようなセッティングにしている。ということだけれど、試乗車は4WDだったため、ガスでも車重は1470kgある。e:HEVのクロスターのFFと10kgしか違わない。そんなこんなで、乗り心地面に大きなは感じられなかったのではあるまいか。 もっともこれは、ガスの4WDの乗り心地がイマイチだったということではなくて、e:HEVクロスターFFの乗り心地が望外によかったのである。 ガスの最大の魅力は、燃費は別にして、e:HEVとおなじ能力を持っていることだ。それなのに、価格はe:HEVよりおよそ35万円、正確には34万9800円お求めやすい。試乗車の車両価格は292万8200円で、300万円を切っている。これがe:HEVになると、327万8000円に跳ね上がる。 要はなにをフリードに求めるのか? で、ある。このカテゴリーで唯一のキャプテンシートと、後席専用エアコン。より広くなった荷室要領に、より軽い力で跳ね上げ収納ができるようになった3列目のシート。これらはガスでも手に入る。もちろん、e:HEVにはe:HEVの魅力がある。それについては別に書いた。 だけど、筆者だったら、ま、ガソリンのほうが、馴染みがあるということもあり、ガソリンでいいか、と、思う。がまんするわけではない。これでいいや、と、思うのである。それでもって、e:HEVを選ばなかった34万9800円分、パーっといっちゃうのも、いいと思うなぁ。
文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)